2023年度は、以下に述べる3つを研究テーマに掲げて実施した。 ①スプロール開発を抑制するための手段の一つである線引き(区域区分)制度を廃止した全国の自治体を対象として、廃止前後のそれらの地域の人口動態や近隣自治体への影響を地理的な関係性に基づき類型化して分析することで、スプロールの要因になりえる規制緩和の実態と土地利用への影響を定量的に把握した。次に、②スプロールを誘発する要因として懸念されている3411条例(50戸連たん制度)を廃止した自治体に着目して、廃止前の条例の内容、廃止時の経過措置の状況、廃止後の代替制度を把握するとともに、複数の都市を対象に人口推移と開発許可の実績を分析することによってスプロールの抑制につながる知見を得た。最後に、③コンパクトシティの効果を国内の研究を対象にレビューすることで、スプロールの抑制を通じて実現される都市像の効果を、定量的なエビデンスとともに環境、経済、社会の視点から多角的にとりまとめた。 現行制度である線引き制度及び3411条例を対象に分析することによって、それらの効果と限界点を把握することができた。例えば、都市圏外縁部に位置する自治体において、線引き廃止につながりやすいこと、線引き廃止による開発への影響は都市圏内の中心都市との地理的関係や土地利用の状況に依存する傾向があること、また、3411条例廃止後の代替制度については、廃止前と同等の基準としている場合と既存集落の維持に注力している場合に二分されており、代替制度の内容によっては必ずしもスプロール開発の抑制につながらない可能性があることなどを示した。
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