本研究では、仮設後の住まいである災害公営住宅と防災集団移転地を対象として、入居者の転出入に伴うコミュニティの変化や多様性・異種混交性に着目するとともに、そうしたコミュニティを居住地内において完結したものとしてとらえるのではなく、周辺地域社会との相互関係においてとらえなおすことで、仮設住宅後の住まいにおける高齢者の孤立化防止の新たな方途を探るとともに、周辺の地域社会や地域住民を含めたより広範な地域包括ケアに接続してゆく可能性について検討した。 調査方法は、アンケート調査とインタビュー、行動観察調査、参与観察を組み合わせて調査を行った。すでにこれまでの調査で災害公営住宅と防災集団移転地の概要は把握しているので、今回の研究ではより詳細なデータを収集することに重点を置いた。具体的には、入居者(自治会長を含む)へのアンケート調査とインタビューを通じて、1)入居者の住民構成とその変化、2)仮設後の住まいにおけるコミュニティ活動の実態、3)周辺地域住民との関係を明らかにした。コミュニティ活動の実態については、集会所で行動観察調査を行い具体的な利用状況を把握するとともに、イベントやお茶会などにできるだけ参加して参与観察を行った。支援員へインタビューを行い、4)既存の地域包括ケアのサービスと支援員の活動内容を明らかにした。研究の結果、災害公営住宅においては、近隣の知人や友人の存在など社会関係に起因するものが高齢者の「暮らしやすさ」にとって大きな要因となっていたこと、「暮らしやすくなった」理由としては「近隣住民と交流が生まれ、助け合いができるようになった」や「住民同士で話し合いができている」など新たな社会関係を築くことができたこと、そしてそうした新たな社会関係構築のきっかけとして、災害公営住宅の集会所で開催されるお茶っこやイベントへの参加が重要であることが明らかとなった。
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