研究課題/領域番号 |
21K04420
|
研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
青柳 由佳 東京家政学院大学, 現代生活学部, 助教 (60713724)
|
研究分担者 |
大橋 竜太 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (40272364)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 木造建築構法 / 板倉 / 土塗り板倉 / 放射性炭素年代法 |
研究実績の概要 |
民家や倉などは、地域ごとや建物の型ごとに構法の変容を明らかにし、おおよその時代的変遷を明らかにしてきた。しかし民家は寺社建築等に比べ文献史料も乏しく、また建設年代を明らかにできる墨書が残っている事例が多いとは言い難い。近年技術的な進歩が著しい放射性炭素年代法を利用すれば、用いた木材の伐採年を推定でき、これらの建物の建設年代をより精密に推定でき、木造構法変容の詳細な知見を得ることができると考えた。本研究は既往研究で指摘されている板倉構法の型式変容について、放射性炭素年代法を取り入れることで再評価することを目的とする。研究対象地域は郷蔵とともに板倉が多数残存する群馬県周辺地域とする。群馬県周辺地域を1)浅間山麓と2)赤城山麓にわけて調査を行う。地域ごとに外観からの悉皆調査を行い構法型式を明らかとした上で実測調査により構法の詳細を明らかとする。さらに既往研究で明らかにされている構法の型式編年、地域史および放射性炭素年代法により、型式編年と変容時期を考察する。 2022年度は群馬県西部の1)浅間山麓を中心に板倉の残存状況を確認しながら、実測調査棟数を増やした。この地域の土塗り板倉の構法類型は現時点で「セイロウ倉」「落とし板倉」「貫板倉+木小舞」があることが明らかとなった。調査対象の倉の中で、放射性炭素年代測定をすべき事例を慎重に検討し、本年度は1棟実施した。本地域の板倉は、その多くに土が塗られているため、放射性炭素年代測定に必要な試料を採取する年輪がみえる部材選定が難しいことが要因で、年代測定すべき板倉を選定することに時間がかかっている。構法調査で明らかとなった知見は、本年度の日本建築学会大会にて発表予定である。また2021年から2023年3月までの間に行われた嬬恋村重要文化財「鎌原の郷倉」の解体修復工事での調査により、明らかとなった構法的知見を日本建築学会技術報告集へ投稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は群馬県の1)浅間山麓地域と2)赤城山麓地域を対象として、A)板倉の構法調査、B)放射性炭素年代調査、C)文献調査より成り立っている。 2022年度は1)浅間山麓地域を対象としたA)板倉構法調査を中心に行い、調査が必要と思われ年代調査が可能な板倉1棟に関してB)放射性炭素年代調査を行なうことができた。
A)構法調査では、この地域の板倉に「セイロウ倉」と「落とし板倉」と「貫板倉+木小舞」があることが確認された。これらに関する成果は本年度の日本建築学会大会学術講演で発表予定である。また「セイロウ倉」に関しては嬬恋村の重要文化財である鎌原の郷倉の解体修理工事に関わることができたため詳細な記録を取ることができ、その知見を日本建築学会技術報告集へ投稿した。 B)放射性炭素年代法は部材の小口で年輪を確認して試料を採取するが、この地域の板倉の多くに土が塗られているため、年輪が確認できる部材小口を見つけることが難しく、外壁部分の土が剥離した場所より試料を採取することとし、それが可能な板倉の選定に時間がかかっている。しかし試料採取の適所を把握することが出来たため、次年度からは経年劣化により部材小口が外部より見える可能性が高い「セイロウ倉」を中心に、試料採取を試みたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は群馬県の1)浅間山麓地域と2)赤城山麓地域を対象として、A)板倉の構法調査、B)型式変容を明らかにするための放射性炭素年代調査、C)文献調査より成り立っている。 2021年度は1)浅間山麓地域を対象としたA)板倉構法調査及びC)当該地域の村史を中心に文献調査を行った。 2022年度は1)浅間山麓を対象にA)板倉構法調査の実測棟数を増やし、土塗り板倉の壁構法の類型を明らかとした。またその内1棟について放射性炭素年代測定を実施した。 2023年度は1)浅間山麓地域についての調査結果をまとめる予定である。また同手法で2)赤木山麓地域の調査を行い比較を行う予定である。2023年度は本研究の最終年度のため、調査報告書を作成し、調査地に得られた知見を還元したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
放射性炭素年代測定は費用がかかるため、慎重に調査対象板倉を選定する必要がある。また本研究対象地にある板倉はその多くに土が塗られているため、試料を採取する年輪がみえる部材を見つけることが困難であった。そのため、放射性炭素年代測定の棟数が予定に満たない状況であり、そのために費用の残額が生じている。次年度は、経年劣化により土が剥離している部分より試料の採取が比較的しやすい「セイロウ倉」に着目して、試料の採取を試みたいと考えている。
|