研究課題/領域番号 |
21K04423
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩田 伸一郎 日本大学, 生産工学部, 教授 (30314230)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | AED / タクシー / 救命ドローン / ドローンポート / 配置計画 / 飛行ルート / 道路交通センサス |
研究実績の概要 |
AEDの整備方法として、従来の設置方式に変わりタクシー(AEDタクシー)とドローン(救命ドローン)を用いてAEDを需要点に搬送する仕組みを考えた場合に、タクシーでカバー可能な圏域の広さとタクシーの走行台数の関係や、ドローンの設置台数とカバー圏域の関係を、千葉市の中央区および緑区を事例に検証した。 人口密集地を対象とするAEDタクシーについては、タクシー乗り場や営業所で待機するタクシーと走行中のタクシーが需要点に配車される設定において、目標到着時間をパラメータとして1分から4分で変化させた場合のカバー圏域を可視化し、面積カバー率と人口カバー率の2つの指標を用いて導入効果を評価した。区の面積の半分以上が人口密集地である中央区では、タクシーの走行台数が多い道路が区を横断しており、面積カバー率と人口カバー率が到達時間に比例して上昇し、4分カバー圏域では面積カバー率が39.9%、人口カバー率が68.5%に達することを明らかにした。一方、人口密集地の面積比率が低い緑区では人口密集地の面積が狭く、タクシーの走行が一部の道路に限られるため、3分カバー圏域における面積カバー率が約10.1%、人口カバー率が25.3%とともに中央区の同値を大幅に下回ったが、4分圏域では面積カバー率は20.5%に過ぎないものの、人口カバー率は50.3%まで向上することを明らかにした。 AEDタクシーでカバーすることができないエリアを対象とする救命ドローンについては、河川と幹線道路状を飛行ルートとする救命ドローンのモデルを考案し、ドローンポート設置場所の選定ルールについて検証した。千葉市の中央区と緑区を事例として、救命ドローンの飛行速度を時速70kmに想定した場合のドローンポートの配置とカバー圏域を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AEDタクシーの導入モデルについて検討を行った。当初は、流し営業中のタクシーに需要点から最寄の幹線道路で遭遇するケースと、営業所やタクシー乗り場で付け待ちするタクシーを配車するケースを複合したモデルを用いてカバー率を検証する計画であっが、道路交通センサスのデータから概算した流し営業中のタクシー走行台数に基づくカバー率が想定を大幅に下回ったほか、不確実なタクシーの運行状況に結果が大きく依存したことから、これらの改善を目的としてモデルの再検討を行なった。流し営業中のタクシーについても付け待ちタクシーと同様に配車する設定とし、配車の始点につていは道路交通センサスのデータに基づいて道路ごとに確率的に評価することとした。その結果、当初のモデルと同様にタクシーとの遭遇確率に依存するものの、タクシーの運行状況の不確実性による影響とカバー率が大幅に改善されたAEDタクシーの可能性を示すことができた。 救命ドローンの導入モデルについて、AEDタクシーとの役割分担を考慮し、タクシーの走行台数が比較的に多く、高層建築が密集してドローンの飛行に適さない市街地を除いた地域を対象エリアとして検討を行った。飛行ルートについては、制約条件を定めないケース(市有地の上空を含めて自由に飛行できるケース)で対象エリア全域をカバーするのに必要なドローンポート数を求め、その値を目安に制約条件を定めた場合に必要となるドローンポート数を評価しながら検証した。河川と幹線道路でつくるネットワークを飛行ルートとして設定し、ネットワークの交点をドローンポートを設置する候補地としたケースにおけるカバー率とドローンポート数を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
AEDタクシーの導入モデルについては、タクシー交通量の推計精度の再検討が必要であり、より詳細な交通量データを用いて時間帯によるカバー圏域の変化について検証を進めていく。また、初年度は課題の整理を目的として、対象エリアを千葉市の2区に絞って検証を行ったが、対象エリアを千葉市全域に拡大して多様な立地条件と導入効果についても検証を行う予定である。コロナ感染流行の影響により、タクシーの運行状況の把握を目的としてタクシー事業者へのヒアリング調査の実施を控えたが、それに代わるものとしてタクシードライバーを対象としたWebアンケートやアウトソーシングによる簡易的な運行台数調査を検討している。 救命ドローンの導入モデルについては、各ドローンポートのカバー率の向上とカバー圏域の重複の改善を目的として、ドローンポートの選定ルールについて再考する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの感染流行の影響で予定していた調査を実施することができず、旅費、データ整理や入力の作業補助の人件費等を使用できなかった。また、研究の実施スケジュールを見直して、当初次年度に予定していた救命ドローンのモデル構築の考察を先行して実施することになり、シミュレーション用PCの購入を次年度に先送りした。 繰越金については、先送りしたシミュレーション用PCの購入に使用する予定である。 翌年度分として請求した金額については、当初の予定通りデータの追加等に使用する予定である。
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