研究課題/領域番号 |
21K04426
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研究機関 | 開志専門職大学 |
研究代表者 |
西村 伸也 開志専門職大学, 事業創造学部, 教授 (50180641)
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研究分担者 |
齊藤 雅也 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (20342446)
棒田 恵 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80736314)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | COVID-19 / 小中学校 / 積雪寒冷地 / 建築計画 / 環境計画 / 換気 / CO2濃度 / 行動特性 |
研究実績の概要 |
2020年から起こったCOVID-19の感染拡大は、教育の場に多くの混乱をもたらし、子供たちの学習の質と機会を大きく損ねている。本研究は、新型コロナウィルス等の感染を防ぎ質の高い学習を継続するための学校計画を目指して、これまで学校計画では考慮されなかった感染症予防の視点をもつ計画指針を提案するものである。建築計画と環境計画の研究者が協働して、暖冷房で課題の多い積雪寒冷地の小中学校を対象として、学習環境での感染を防ぐ措置と課題、児童・生徒の行動変容等をアンケート・インタビューから捉え、調査によって教室・廊下・校務センター・図書室・保健室等の場所毎に環境特性(換気回数・換気量・風速・CO2濃度と室温変化等)と、学習と休み時間での児童・生徒の行動特性(学習形態・人体間距離・グループ規模等)の調査分析から、学習・生活行動の違いによる教室・廊下の環境特性の変化を捉えることを目的とする。 2021年度は、アンケート調査を新潟(新潟市・三条市・長岡市)と札幌(札幌市)の小中学校に対して行った。前年の2020年度の各学校でのCOVID-19対応と課題について自由記入形式を含む質問を、校長・教頭先生に対して実施した。回収数は108件(新潟・小学校30校・中学校29校、札幌・小学校23校・中学校26校)であった。集計の結果、新潟・札幌とも授業運営に課題があったのは、音楽・家庭科・体育が共通していて、音楽室最も高かった。一方、普通教室に課題をもつ学校は、札幌では過半数にのぼり、内外温度差・外からの強風が主な理由となり、冬期の不十分な換気が課題として捉えられた。教室につながる多目的スペースは、教室の問題を削減していることも捉えられた。また、COVID-19対応のガイドラインについて、給食や休み時間、体育や音楽、家庭・技術などの授業場面での過ごし方を重要と捉えている自治体が多いことも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、冷暖房時に換気方法を特に検討する必要がある積雪寒冷地の小中学校を調査対象として、COVID-19への対応と課題とをアンケートから捉えるものである。調査は学校空間の環境特性(温熱環境・換気量・CO2濃度の変化)、児童・生徒の学習活動の様態を捉え、その相互の関係に焦点を当てて、将来への備えとしても新型コロナウィルス等感染へのリスク回避ができる空間計画の指針を分析・提案する。CO2濃度が上昇する空間と児童・生徒の学習の場面、換気と暖冷房方法に着目し、①COVID-19対応のために学校がとった温熱環境管理、新たな機能、教育方法の変更と工夫、②教室・廊下・共有スペースの環境特性(温湿度・CO2濃度・体感温湿度)の経時的変化、③室温・換気・CO2濃度の変化と学習活動・行動様態との関係、④「感染リスクが低い空間・場面」と「感染リスクが高くなる空間・場面」の特徴、⑤新型コロナウィルス等感染症に対応できる学校計画を明らかにする。(調査は、教育者・教育研究者・大学教員と調査対象校の先生方の指導・指示を受け、対象者への説明を十分に行う。) 2021年度は、特別教室型、小中一貫校、教科センター方式の学校の教員・生徒へのアンケート・ヒアリング調査を行った。新潟と北海道の小中学校50校を目標として、特別教室型・小中一貫校・教科センター方式等の様々な学校を対象としながら、学校の平面構構成との違いも分析できるように、その選定を行った。結果として、108校からの有効回答を得ることが出来、不十分な回答部分や質問箇所の理解が不十分な部分、さらにより回答について詳しく聞くためのヒアリング調査をアンケート調査に基づいておこなった。COVID-19の感染が続く中での調査でもあり、COVID-19への建築的な対応についての本研究を進める必要が強く求められている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度のアンケート調査からは、特別教室で声を発生したり、グループワークを行ったりする必要の高い教科が、COVID-19対応への課題が指摘された。音楽・家庭科・体育が共通していて指摘が多い教科であった。札幌の冬季の教室の暖房と十分な換気とは同時に条件を満足しにくい問題であり。多くの学校で課題を持っていることが確認された。また、ワークスペースや空き教室、多目的ルーム等が、教室での児童・生徒の密度を低減するために用いられていることも捉えられた。一方、各都道府県市の教育委員会が作成したガイドラインで言及されていない教科でも、音楽と同様に発声の機会が多い英語、グループワークや地域の方との交流のある総合的な学習なども感染リスクが高い教科となっていた。さらに、ガイドラインの中には各学校の建築的・運営上のそれぞれの事情で実施が難しいガイドラインもあったことが捉えられた。さらに、リスクの高い活動、教室での身体的距離の確保等、感染者数の多い地域の方が、感染者数の少ない地域よりも数値や具体的な表現を用いて基準を示していた自治体もあり、ガイドラインの記述の仕方や示し方にも大きな違いがあったことが捉えられている。 2022年度は、より広くCOVID-19対応の状況を捉えるためにも、さらに回答数を増していくことを計画している。2021年度は108校の小中学校からの有効回答を得ることが出来たが、2022年度も同様のアンケート調査とインタビュー調査を進めることを計画している。2021年度に気づいたアンケート調査項目の不備は最小限で訂正しながら、2021年度から2022年度の二年間で得られたアンケートを分析して、2023年度に始まる学校調査(環境の温湿度・CO2濃度調査、学習形態・グループ形成等の行動調査)に移行していくことを計画している。
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