長い年月を経過した集合住宅団地では、建物の老朽化とともに居住者の高齢化が顕著になってきており、独居老人の問題を含み大きな社会問題となってきている。そうした問題は、通常は社会福祉的な視点から取り上げられ議論されることが多いが、本研究は、社会福祉的な視点にとどまらず建築計画あるいはコミュニティに関連することがらと捉えて、新たな視点にもとづく団地再生の可能性に言及しようとするものである。 本研究の独創的なところは、「食事の提供」を活動の中心に据え、それに加えてさまざまな活動を展開することがコミュニティを支え、高齢者問題の解決に寄与するとともに団地再生につながる可能性に言及しているところである。「高齢者支援、食事の提供」というと、前述したように、一般的には、社会福祉的な視点によってのみ語られるが、本研究のユニークなところは、それを、建築あるいはコミュニティに関連することがらとして位置付けているところである。 具体的には、次のように研究を進めて、具体的な成果をあげている。 ・各地方自治体のホームページと「キーワード:食事提供」による検索によって、食支援活動を行っている団体を全国から数百抽出したうえで、さらに、集合住宅団地と関連して活動している33団体を抽出し、全団体を訪問してヒアリング調査を行った。 ・その結果から、詳細調査対象として3団体を抽出し、それら3団体に関しては、複数日数を費やして利用等の実態調査とアンケート調査を行った。 ・以上によって、食支援活動が団地再生と高齢者問題の解決に寄与している実態を明らかにするとともに、活動の持続性に言及した。
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