研究課題/領域番号 |
21K04436
|
研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
|
研究分担者 |
竹内 志保子 (小池志保子) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (10433294)
栗本 康代 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (20410954)
中尾 七重 山形大学, 理学部, 研究員 (90409368)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 重文民家 / 維持管理 / 自助 / 公助 / 共助 |
研究実績の概要 |
個人重文民家の自助型日常管理を支える公助・共助のあり方の提案を目的とし、1)求められる公助・共助の把握、2)市町村による公助の実態と課題把握、3)地域での共助の課題把握、4)多様な共助手法の事例検討を行うものである。本年度は1)を中心に調査を行った。 重文民家の自助型維持管理の実態と課題を把握するため、全国の重文民家の所有者を対象にアンケート調査を実施し、121住宅から回答を得た。主な結果をつぎに示す。①所有者の状況について:全体の約83%で、重文指定時から1度または2度の代替わりが発生していた。70歳以上の当主が58.5%を占め、高齢化が顕著である。日常の維持管理は1人または2人の小人数で行っている。②大規模修理について;大規模修理時の国の補助率は一般的には80%または85%で、通常、残りを自治体と所有者で分担するので自己負担額は工事総額の10%以内が多いが、1000万円を超える負担が34住宅あった。③日常管理について:2020年度に日常の維持管理にかかった費用は、40万円未満が約24%を占める一方で、年間100万円以上を要している住宅もあった。これを重文指定範囲との関係からみると、主屋に「主屋に加え、離れ・土蔵・長屋門・土塀などの付属建物を含めて、敷地全体(敷地指定)」の場合は、「主屋に加え、離れ・土蔵・長屋門・土塀などの付属建物の一部」や「主屋のみ指定」よりも日常の維持管理費用が多くかかる傾向が有意に見られた。 2)訪問インタビュー調査:コロナ禍の影響で6住宅に留まった。観光地に立地する重文民家では、新型コロナウイルス感染拡大により見学収入が大きく減少するほか、感染を考慮して庭の整備回数を減らしたが、人手確保が困難になった例が把握できた。コロナウイルス感染の拡大が重文民家の維持管理にも影響を与えていることが窺えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大が続いたが、6軒の重文民家を訪問してインタビュー調査を実施することができた。また、全国の重文民家の所有者を対象に重文民家の維持管理負担について尋ねるアンケート調査を実施し分析を進め、日本建築学会大会に報告原稿を投稿した。このアンケート調査の企画にあたっては、重文民家の所有者の会である全国重文民家の集いとプロジェクトメンバーを立ち上げることで、所有者の意見を取り入れながら現実に即した内容の調査内容を作成することができた。以上のことを踏まえ、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。しかしながら、調査時期が遅くなったため、今年度中に調査結果を深く分析して論文発表するには至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
①本年度に実施した重文民家の維持管理に関わる自助の実態についてのアンケート調査結果を詳細に分析する。また、分析の過程では全国重文民家の集いのメンバーとも検討を重ね、所有者からみた意見をいただいて検討を進める。 ②訪問インタビュ-調査については、件数を重ねて実施を続ける。 ③次年度は、自助に関する調査分析を進めた上で、各市町村の文化財担当係を対象に、重文民家の維持管理費に対する公助の実態と課題について調査を行う予定である。 ④コロナウイルス感染拡大の状況によっては、可能は場合は、訪問調査の代わりにオンラインでもインタビューを取り入れることを検知する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が続いたため、重文民家の訪問調査を予定通りの件数を実施することができなかったことにより、調査旅費と研究協力謝金が予定よりも少なくなった。また、学生にアンケ-ト調査の集計作業を依頼する時間数が少なかったため、謝金の使用も少なくなった。このことにより次年度使用額が発生したが、次年度には訪問調査件数を充実させ、また市町村の文化財担当課へのアンケ-ト調査および聞き取り調査を実施するので、調査費用や調査協力謝金に使用する見込みである。
|