研究課題/領域番号 |
21K04436
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
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研究分担者 |
竹内 志保子 (小池志保子) 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (10433294)
栗本 康代 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (20410954)
中尾 七重 山形大学, 理学部, 研究員 (90409368)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 重文民家 / 維持管理 / 公助 |
研究実績の概要 |
本研究は、個人重文民家の自助型日常管理を支える公助・共助のあり方の提案を目的とし、①求められる公助・共助の把握、②市町村による公助の実態と課題把握、③地域での共助の課題把握、④多様な共助手法の事例検討を行うものである。2023年度は主に②についての調査結果の詳細分析と関連して英国の歴史的住宅の事例調査を行った。 1)重文民家の維持管理に対する公助について:2022年11月-2023年1月に、個人所有と公有の重文民家が所在する全国の市町村の文化財担当課を対象に行ったアンケ-ト調査結果の分析を進め、日本建築学会大会や同近畿支部研究報告会で、公有重文民家について次の点を報告した。①公有重文民家を管理する市町村の多くは人口10万人未満の小都市である。重文民家の保存活用計画は策定されていないことが多い。②公有化にあたり、建物等は市町村に無償譲渡されることが多いが、その後の維持管理には毎年、一定の費用が発生する。③市町村は建物の修理費用に加えて、日常の維持管理費、公開や広報などの費用負担をしている。約半数は無料で公開されて、有料の場合も維持管理に十分な公開収入があるのではない。 2)英国における歴史的住宅への支援について:2023年9月に英国の歴史的住宅の支援団体(Historic Houses)と加盟住宅を訪問し、個人所有の歴史的住宅への支援について資料収集を行った。その結果、Historic Housesは加盟住宅の調査を行い、いかに歴史的住宅が地域経済、雇用、観光客の獲得、環境問題に貢献しているのかを数値で証明し、それをもとに政府への支援を求めていることが把握できた。英国では、政府が修理費の決まった額を支出をするのではなく、ファンドによって支援するのが通例であることが把握できた。 3)地域での共助の課題把握、多様な共助手法については、数事例を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、まず1年目に重文民家の維持管理の自助を把握するために、全国の個人所有重文民家の所有者を対象にアンケ-ト調査を実施し、重文民家の維持管理に関わっての経済負担状況の分析を行った。2年目は、重文民家の維持管理に対する公助の実態を把握するために、重文民家が所在する市町村の文化財保護担当係へのアンケ-ト調査を実施した。また、歴史的住宅の保全制度面で進んでいる英国について、歴史的住宅協会と加盟住宅を訪問し、歴史的住宅協会の支援内容等を把握した。 以上のように、各種調査によって研究デ-タや資料を収集することはできたが、その分析作業に時間を要し、査読付き論文の執筆には至れなかった。調査研究の実施はおおむね順調に進展したが、調査データや資料の分析とまとめを十分にできなかったことから、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
各市町村を対象に実施したアンケ-ト調査の分析については、回答の表記が複雑で精査に時間を要している。2023年9月に実施した英国の歴史的住宅協会の調査で得られた資料についても、分析が必要である。研究時間をどう確保できるかが大きな課題である。夏休み期間等に集中的に取り組みたい。 重文民家の所有者団体である「全国重文民家の集い」の理事会の協力を得て、調査結果について勉強会を随時開催する体制を構築できたので、所有者の意見をいただきながら、研究のフォロ-アップを進める。 本年度は最終年となるため、重文民家の維持管理を支える共助について調査を進めるとともに、研究報告会を開催して、国内外の調査研究の成果についてフィードバックを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
英国出張予算の計画時に、2023年度の支出全体が最終的にどうなるかを予測できなかったため、出張経費の一部を自己負担した。また、国内調査については、大学の改組業務の会議等により、調査出張に出られる日程が限られ、数事例にとどまった。以上の理由により、次年度使用額が発生した。 2024年度については、重文民家の維持尾管理にかかわる共助についての研究をフォロ-アップするために、重文民家の訪問調査を進める。また、これまでの研究の成果報告会を実施する。昨年度に使用しなかった研究費は、今年度の研究費と合わせ、訪問調査と研究成果の公開報告会に使用する予定である。
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