研究課題/領域番号 |
21K04449
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
天畠 秀秋 武庫川女子大学, 建築学部, 准教授 (20441222)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 終末期古墳 / 3次元GIS / 景観シミュレーション / SfM / UAV / 立地 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、UAV写真測量(ドローンを用いたSfM多視点ステレオ写真測量)により作成した古墳とその周辺の微地形の高精細な3次元モデルと広域の3次元地形モデルを3次元GIS上で統合することにより、畿内における終末期古墳の立地に関わる景観を可視化する景観シミュレーション画像を作成する。景観シミュレーション画像を用いた古墳の軸線・墳丘の形態と自然景観や古代寺院・官衙遺跡との眺望関係の景観分析を通して、各古墳の景観の特徴を明らかにした上で、それらを類型化することにより、終末期古墳の立地原則を解明することを目的とする。 当年度は、畿内の終末期古墳と古代寺院・官衙遺跡の基礎情報の把握のための文献調査(3-1)、河内・摂津の終末期古墳を対象に微地形のUAV写真測量のための現地調査(3-2)、3次元GISによる終末期古墳の景観の可視化(3-3)を行った。 3-1.文献調査: ①河内・摂津の19基の基礎情報(地形図、推定築造年代、古墳の形態、石室・石槨の開口方位等)の文献調査が完了。②畿内の26の古代寺院・官衙遺跡の基礎情報(位置、推定築造年代、伽藍配置・方位等)の文献調査が完了。 3-2.現地調査: UAV飛行の許可が得られた河内・摂津の15基について古墳とその周辺の微地形および石室・石槨を対象にUAV写真測量を実施。 3-3.3次元GISによる景観の可視化:①15基の古墳周辺の微地形および石室・石槨の高精細な3次元モデルの作成が完了。3次元モデルから作成したcm精度の高精細なDSM・オルソ画像と、国土地理院配布の5m・10m DEMにより作成した広域の3次元地形モデルを3次元GISで統合。②上記データを用いて、15基について石室・石槨や墳丘の形態、開口方位と古墳から見た自然景観の関係を示す景観シミュレーション画像を作成した。今後、各古墳から見た景観の特徴の分析を進める予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3-1.文献調査:終末期古墳および古代寺院・官衙遺跡の基礎情報の把握のための文献調査は概ね予定通りに進行しており、19基の古墳、26の古代寺院・官衙遺跡について完了。 3-2.現地調査:古墳の微地形の高精細な3次元モデル作成のためのUAV写真測量は、概ね予定通りに進行しており河内・摂津の15基について完了。計画当初に調査対象の候補としていた古墳のうち、当年度中にUAV飛行の許可が得られなかったものについては、①令和4年度以降に許可が得られる見込みがあるものは調査を延期し、②許可を得ることが困難なものは調査対象から除外することにした。 3-3. 3次元GISによる景観の可視化: ①UAV写真測量により上記15基の古墳とその周辺の微地形および石室・石槨の高精細な3次元モデルの作成が完了。3次元モデルから得られたオルソ画像をGNSS測量による高精細な位置情報によってジオリファレンスすることにより、石室・石槨の正確な開口方位等の測定が可能になった。②3次元GISを用いて、UAV写真測量による3次元モデルから作成した高精細なDSMとオルソ画像を広域の3次元地形モデルに重ねて表示することにより、古墳の石室・石槨や墳丘の形態、開口方位と自然景観の関係を示す景観シミュレーション画像の作成が完了。③古代寺院・官衙遺跡から古墳を見た景観シミュレーション画像の作成については、視点場の設定方法等を現在検討中である。④今後、古墳を見た景観シミュレーション画像の作成も進め、各古墳の立地の特徴を景観的な視点から分析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、前年度に引き続き通年に渡り、畿内における終末期古墳および古代寺院・官衙遺跡の基礎情報の把握のための文献調査(3-1)、主に大和・山城の終末期古墳を対象としたUAV写真測量と古代寺院・官衙遺跡の現況把握のための現地調査 (3-2), 3次元GISによる終末期古墳の景観の可視化(3-3)を行う。また、既に調整を試みたものの当年度中にUAV飛行の許可が得られなかった摂津・河内の終末期古墳のうち、令和4年度に調査許可が得られた場合はそれらを対象に上記(3-2)、(3-3)を行う。終末期古墳の景観の可視化(3-3)のうち、古代寺院・官衙遺跡から古墳を見た景観シミュレーション画像の作成については、視点場の設定方法の検討を経て進める予定である。古墳周辺の地形が大規模に造成されているものは、造成前の地形図に基づき造成前の地形を復元した3次元地形モデルも作成し、3次元GISで統合することを計画している。 令和4年度の後半は、以下の各古墳の景観の類型化(3-4)を行う。 3-4.終末期古墳の景観の類型化:終末期古墳の景観の特徴について、古墳の軸線の方位(石室・石槨の開口方位)と近景・中景・遠景の自然景観や古代寺院・官衙遺跡との眺望関係に着目して類型化し、立地原則を考察する。研究成果を学術論文(日本建築学会)等で社会に公開する。 令和5年度は、引き続き各古墳の景観の類型化(3-4)を行い、過年度の成果とあわせ考察することで、終末期古墳の立地原則を解明する。最終年度の研究成果は、学会大会(同上)や学術論文(同上)等で社会に公開する。前半は最新の研究動向を把握・反映するため上記 (3-1),(3-2),(3-3)を補足的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
UAV飛行の許可が当年度中に得られなかった古墳のうち、次年度以降に許可が得られる見込みがあるものは現地調査を延期したため、69,677円の残額が生じた。残額69,677円は翌年度分と合わせて、現地調査の交通費、現地調査補助にかかる大学院生の人件費として使用する予定である。
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