ベトナム中部の都市フエは,フォンザン川の水系に,ベトナム最後の王朝,阮朝(1802-1945)の都城が形成され,歴史的建造物群は1993年ユネスコ世界遺産に登録された. 宮殿建築の多くは木造で建築装飾に華麗な漆・彩色塗装技術がみられる一方,戦禍を被り建物を失った遺構もある.太和殿は嘉隆4年(1805)に創建後,移築や修理を経て現存する第一級の建築塗装史料である. 本研究は早稲田大学中川武名誉教授が主導し,フエ遺跡保存センターを主なカウンターパートとした一連の「ヴィエトナム・フエ阮朝王宮の復原的研究」を継承・発展し,文献記述,現地採取技術や科学分析などの比較を通じ,太和殿塗装技術の考察を試みた.
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