研究課題/領域番号 |
21K04459
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研究機関 | 大和大学 |
研究代表者 |
包 慕萍 大和大学, 理工学部, 教授 (40536827)
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研究分担者 |
奥冨 利幸 近畿大学, 建築学部, 教授 (70342467)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 田園都市 / 住宅地 / 満洲 / 大連 / 日本 / 郊外住宅 / 満鉄 / 都市計画 |
研究実績の概要 |
2022年度は調査予定地の大連がコロナ感染の状況により、都市全体のロックダウンを繰り返ししており、現地調査を実現できなかったが、文献調査と資料整理では大きな進展があった。まず『満洲建築協会雑誌』に掲載された田園都市に関する言説を全て収集して、データベース化した。また、研究代表者の包慕萍よる「Architecture and Urban Facilities in Modern Dalian, from the Point of View of Sanitation」(『大和大学研究紀要』第9巻理工学部編。2023.3)の論文を刊行し、住宅地のインフラ建設の歴史的経緯を明らかにした。また、アジア住居学研究分野を開拓した吉阪隆正の建築展「吉阪隆正のパノラマ世界:生活スケールから地球へ」(東京都現代美術館)を韓国建築歴史学会の学会誌『建築歴史研究 Journal of Architectural History』(Vol.31.No.2,pp.87-92,2022,韓国語)に紹介した。それに加えて、研究分担者などと共著で「満鉄社宅の採暖防寒技術と室内の和風化について」、「衛生の観点から見た近代大連の都市インフラ計画と建築法規」、「満洲における暖房技術の利用実態と長野県野辺山開拓地での反復」(以上の三つはすべて日本建築学会学術講演梗概集、2023年度)を発表した。さらに、2023年3月10日に、ハイブリッド式で『東アジア近代住宅地の「理想像」を探る』と題するシンポジウムを共催し、近代アジア建築史、植民地都市研究をリードする日本、韓国、中国、ロシアの研究者たちが一堂に会し、近代住宅地における田園都市思想の導入及び住まいの理想像について深く討議した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大連でのコロナ感染によるロックダウンが繰り返していたため、予定していた大連での住宅現地調査ができなかったが、研究計画を調整して、日本の田園調布住宅地、常盤台住宅地などの現地調査を繰り上げて実施し、1920年代、1930年代の日本と旧満洲の住宅設計思想及び手法の同異点を比較研究できた。そして、概要で述べた論文を発表した。また、日本、中国、韓国、ロシアの研究者が集まって、コロナの中でのハイブリッド式で『東アジア近代住宅地の「理想像」を探る』の国際シンポジウムを開催して、韓国の近代住宅地の歴史を総覧し、また、中国広州の住宅地建設の状況、特に華僑たちが持ち込んだ外来文化の影響を明らかにし、さらにロシアによる満洲での植民都市計画における「建築的アンサンブル」の思想を明らかにするなど大きな研究成果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は国内外の感染対策の状況を見極めて、海外研究協力者と相談しながら、現地調査の期間や方法を決めたいと考えて準備を進めている。また、2022年度に収集した研究資料のデータベース化及びデータの整理、分析に重点に置きたい。さらに、オンラインや対面、ハイブリッドの方式を含めて、国内外の研究者と研究会やシンポジウムを行って、議論を深めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の海外での現地調査では、旅費及び滞在費、建築実測調査協力のための人件費や図面作成費などが発生し、最も費用がかかる。2022年度では、予定していた大連での現地調査は、コロナ感染状況によるロックダウンのため実施できなかったため、次年度から大連、北京、上海などでの現地調査による費用を支出する予定である。
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