研究課題/領域番号 |
21K04463
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三谷 徹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20285240)
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研究分担者 |
加藤 顕 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (70543437)
加藤 友規 京都芸術大学, 芸術学部, 教授 (90852765)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本庭園 / 庭園植栽 / レーザー測量 / 点群データ / 透かし剪定 / ゆらぎ / 空間 / 形態 |
研究実績の概要 |
1.各庭園での追加測量とデータ作成:(1)回遊式庭園の植栽空間構成: 対象庭園としていた「南禅寺境内大寧軒の庭」と「くろ谷金戒光明寺紫雲の庭」のデータ内容が不揃いであったため、LMS511とLeica P20両機による計測を補填する。これによりR3年度R4年度の作業により、2庭園全体の、夏、冬の植栽形態のデータが揃い、季節変化の分析を進める準備が整う。(2)座観式庭園の植栽空間構成の研究: 「南禅寺本堂飛泉の庭」の計測が、R3年度は低解像度計測であり、また部分的であったため、R4年度はLeica P20も用い解像度の高いデータ取得を行なう。 2.植栽の揺らぎの研究の始動:R3年度に、部分的計測ではあるが風による枝葉の動きを点群データの経時的ズレとして計測可能であることとが突き止められたため、R4年度はより総合的な計測を行なう。対象は、「光明寺紫雲の庭」の池泉周辺の紅葉群、「渉成園」の紅葉の庭であり、Leica P20を用いた解像度の高いデータ収集を行なう。 3.データ分析と研究:(1)R3年度は伝統的剪定による植栽形態の特徴が点群データで追跡することが判明したため、R4年度は、実際の景観としてはどのような変化をもたらすかを分析した。その結果、回遊園路の平面的位置と景観変化に特徴的な関係のあることが明らかとなり、伝統的剪定技術を伝承する職人技術者にも有益な情報が得られた。 (2)植栽の揺らぎに関しては、まず計測方法として、Leica P20による同一地点3回計測のデータを比較することで、枝葉の微細な動きを点群として表出することを試みた。 4.研究紹介・発表:(1) 3.(1)について定量的な知見が得られ、R4年度日本造園学会全国大会にて発表する(2)デジタルデータによる日本庭園の解析が、動的な空間の揺らぎを研究対象とする可能性を、東京大学建築情報学シンポジウムにて概要を発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 植栽形態の通年的揺らぎに関する研究: R3年度とR4年度の点群データ測量を統合することにより、剪定管理による形態変化、および季節による形態変化を分析する基盤が整う。剪定管理による形態変化は、R3年度中にデータ解析し研究成果を得たが、最も分析容易と考えていた季節変化については、データ取得に通年計測時間がかかったため、現在のところデータ取得編集にとどまっている。基本的な形態分析項目であるため、次年度での解析が望まれる。 2. 植栽形態の秒単位揺らぎに関する研究: R3年度の試行とR4年度の包括的データ取得により、分析を始められる段階に進められる。分析を進めるための現在の問題点は、Voxel解像度の設定である。R3、4年度は、森林解析系の基準値0.125mを用いてきたが、R4年度中の研究により、0.125mの適性確認研究の必要性が認識される。風による枝葉の動きの解析に最適化したVoxel値を見出す基礎研究を現在進めている。 3. 庭園植栽形態のアーカイブ資料作成: 本研究は、伝統的植栽管理下にある日本庭園の植栽形態データのアーカイブ作成も目的としている。現在、通季におよぶ動的形態変化の研究資料に足るデジタルデータが整ったのは、「大寧軒庭園」、「光明寺紫雲の庭」、「飛泉の庭」の3庭園である。揺らぎに関しては「渉成園」、「對龍山荘」のデータが不足している。
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今後の研究の推進方策 |
1.計測機器の整備に関する問題: R4年度は、研究遂行に対し、測量機器の不備故障など幾つかの障害が生じた。この反省に立って、R5年度は、一回の庭園観測調査に関しても複数機器の持ち込みを計画する。 2.R4年度中に整った回遊式庭園2庭園全体の、夏、冬をとおした季節変化の分析を進める。この分析には、R3年度に行った透かし剪定による植栽形態変化の分析で確立した分析プロセスがそのまま応用できる。 3.枝葉のゆらぎに関しても、回遊式庭園「渉成園」もみじ谷での高解像度総合的点群データの編集が終了しているので、ゆらぎ解析に必要な当たらなVoxelパラメーターの見極めを終わらせ、揺らぎの強度とその庭園内での分布を3次元的に解析する。 4.最終年度のまとめとして、剪定、季節、風による揺らぎなどの複数の植栽形態の動態変化を視覚化し、日本庭園の空間特質として論じられる表象形式を模索し、次の研究展開に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月ー2月に計測予定していた、落葉時の補完計測のための調査が2月下旬になったことと、計測機器の搬送の内容が変更になったため、予算計画とのズレが生じた。計画遅延の理由は、年末に、補完計測のために計画していたLeica P20の電極接続不良の不具合が生じ、その修理検討に時間がかかたことにある。最終的にLMS511のみの計測となったため、計画していた予算の一部を用いなかった。これはR5年度の再計測において使用される予定である。
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