研究課題/領域番号 |
21K04468
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
溝口 正人 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (20262876)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 民家 / 濃尾地震 / 三河地震 / 震災復興 / 現存遺構調査 |
研究実績の概要 |
本研究は明治24年(1891)の濃尾地震で甚大な被害を受けた岐阜県西濃地域から愛知県の尾張地域にかけての濃尾平野、および昭和20年(1945)の三河地震で甚大な被害を受けた西三河地域、両地震被災地における、被害を受けつつも倒壊はせずに存続した民家の罹災前後の変化を現存遺構の実態から把握し、震災が民家建築にどのような変化をもたらしたのかを、特に耐震補強など構造の変化に着目して明らかにすることを目的とした。そこで可能な限り限りの事例数を収集し実態把握を行うこととし、震災被害から復興した民家の罹災前後の変化、震災後に新たに建設された民家に生じた変化を分析することで、震災が民家建築にどのような変化をもたらしたのかを明らかにすることとした。 本年度は聞き取り、実測調査の実施が困難ななかであったが、西三河地域、特に西尾市と安城市において、三河地震で被害を受けた民家の実態把握が可能となった。コロナが落ち着きを見せた年度末に安城市の民家遺構2件については、詳細な実測調査を行った。いずれも明瞭に三河地震による被害が確認され、特に柱と差鴨居の仕口部分での損傷が共通することが明らかとなった。 また遺構調査が難しかった本年度は主要な研究費を執行して資料の収集を積極的に進めた。遺構調査の結果を読み解くため、地方史や両地震の震災記録の収集を行い関連する記述の整理も進めている。濃尾地震後となる明治28年より工事が始まり、33年に竣工した尾張徳川家大曽根邸の書院・広間の図面が入手できたため、耐震性向上のための構造補強の実態を図面から分析している。なお本研究の目的に直接沿った成果ではないが、本研究期間以前に実施した実測遺構について、震災後の補強実態の観点から整理を行う過程で、使われ方からの民家の平面分析を行ったため日本建築学会大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺構調査に関しては、本年度はコロナの影響下、聞き取り、実測調査の実施が困難ななかであったが、年度末に調査が可能となり現況実測調査を行った案件が2件あった。現在、図面作成や遺構の分析を行っている段階である。構造部材の被害の実態把握ができたことは大きな成果であるが、調査時期が年度終わりの時期になったため、分析がずれ込んでおり、次年度報告に向けて分析を進めている段階である。尾張徳川家大曽根邸図面の分析に関しては、年末での資料入手となったため、同時代類例との比較を確認している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
濃尾地震による被害を受けた民家の遺構が名古屋市内で確認されたため、令和3年度では進展を見せることができなかった濃尾地震による民家の被害の実態把握が可能となった。前年度から継続で取り組む尾張徳川家大曽根邸の分析と合わせて、震災が民家や住宅建築の耐震性の変化に与えた影響を濃尾平野地域でも事例的に考察する予定である。西三河地域については、自治体の協力もあってさらに調査が可能な状況となった。コロナの収束状況を見極めつつ迅速な調査を予定している。
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