本研究は明治24年(1891)に発生した濃尾地震、および昭和20年(1945) に発生した三河地震で甚大な被害を受けた地震被災地を調査地域として、被害を受けつつも存続した現存民家の罹災前後の変化の実態を把握した。特に耐震補強の実施など構造の変化に着目して事例分析を行い、震災後に新たに建設された民家に確認できる対策と比較することで、震災が民家建築にどのような変化をもたらしたのかを分析した。調査した濃尾地方、三河地方の現存遺構からみると、震災は民家に構造的に明確な革新をもたらすことはなく、構造的に見た実態は、伝統的な構造の弱点の補強に留まるものであったことが明らかとなった。
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