研究課題/領域番号 |
21K04476
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石井 一洋 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20251754)
|
研究分担者 |
片岡 秀文 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10548241)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 航空宇宙工学 / 推進機関 / デトネーション / 衝撃波 |
研究実績の概要 |
回転デトネーションエンジン(RDE)は、環状燃焼器の周方向にデトネーションを回転・定在させるものであり、次世代航空宇宙用エンジンとして米国を中心に研究開発が活発に行われている。しかしながらRDEの動作モードを支配する普遍的なパラメータは未だ確定しておらず、これは主として燃焼器内における推進剤の混合状態がRDE毎に異なることに起因している。 本研究は、RDEインジェクター部の燃料濃度を実測することで、インジェクター性能が推進性能および動作モードに及ぼす影響を明らかにし、RDE開発に必要不可欠な推力・比推力を定量的に予測可能な普遍的物理モデルの構築を行うことを目的としている。 燃料濃度計測には、環状燃焼室を横切るレーザーシートを構築する必要があり、これには環状燃焼室を石英ガラスで構成する必要がある。研究計画段階では、既存の燃焼室外径50 mmと115 mmの2種類のRDE燃焼器を使用し、噴孔型および噴孔型とスリット型を組み合わせたインジェクターを用いる予定であった。しかしながら光学系設計段階で、既存のスリット型インジェクターを有するRDE燃焼器では、インジェクター部の燃料濃度計測が困難であることが困難となることが判明した。このため燃料濃度計測が現実的に可能となる燃焼室外形80 mmの噴孔型RDE燃焼器の設計・製作を行った。さらに、赤外He-NeレーザーをRDE燃焼器に導くファイバー光学系の構築、光学系調整を省力化するためにモジュール化した燃料濃度計測光学系の構築を行った。さらに、既存の燃焼室外径50 mmと115 mmのRDE燃焼器を用いた実験を行い、焼室軸方向の圧力分布を計測するとともに推力計測を行った。実験結果を元に、燃焼器内流れをRayleigh流れとFanno流れを組み合わせた1次元流れモデルを構築し、燃焼室静圧を用いた推力性能予測を可能とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載したように、令和3年度は燃焼室外形80 mmの噴孔型RDE燃焼器を新規に設計・製作した。これは、既存のスリット型インジェクターを有するRDE燃焼器の燃焼室外筒を石英ガラスで構成すると、インジェクター直下の燃料濃度計測が物理的に不能となる上に、濃度計測用光学系の配置に制約が生じ、当初目的である燃料濃度分布計測が著しく困難となることが判明したためである。そこで新規にRDE燃焼器を製作したために、当初計画よりも研究実施に遅れが生じている。 なお、燃料濃度計測用の光学系では、レーザー光のRDE燃焼器導入には赤外ファイバー光学系を用いるとともに、レンズおよびミラーを円筒製容器内に配置してモジュール化したものを構築し、光学系の調整を極力不要とするようにした。さらに、既存のRDE燃焼器を用いて燃焼室静圧と推力計測を行い、燃焼室静圧から推力予測を可能とする1次元流れモデルの構築を行った。 以上のように、燃料濃度計測以外は当初計画通りに進行しており、本研究は「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
RDEでは、動作モードは主として推進剤の質量流量に大きく影響を受けるものの、複数の研究者の実験データを同一質量流量で比較しても必ずしも同一の動作モードとはならない。これは、RDE毎に使用しているインジェクター構造が異なるためであり、インジェクター直下の燃料濃度分布が動作モードに大きく影響することが数値シミュレーション結果よりわかっている。しかしながら、実際のRDE燃焼器の燃料濃度分布を計測した例は申請者の知る限り存在しない。 本研究は、RDE燃焼器の燃料濃度分布が動作モードおよび推進性能に与える影響を解明することを主眼としており、インジェクターによる燃料と酸化剤の混合の様子を調べることに注力する。以降は、令和3年度に製作した燃焼室外径80 mmの燃焼器を用いることとし、令和4年度は下記の事項を予定している。 (1) 燃料および酸化剤の供給圧力を変化させて、非燃焼時および燃焼時(運転時)の燃料濃度分布を調べる。 (2) 燃料濃度分布とRDE動作モードおよび推力との条件マッピングを行う。 (3) 1次元Burgers方程式に基づくRDE動作モデルを構築し、燃料濃度分布の計測結果を持ち手インジェクター回復項の定式化を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、燃料濃度分布計測を行った後に、研究分担者がRDE物理モデルのインジェクター回復項を定式化する予定であったが、「現在までの進捗状況」で述べたように,RDE燃焼器を新規に設計・製作しために燃料濃度分布計測は令和4年度に実施予定となっている。令和3年度には、赤外ファイバー光学系、レンズおよびミラー等のモジュール化を行ったものの、赤外ラインセンサーのRDE燃焼器への組み付けは未実施の状況である。そのため、上記センサー組み付けに用いる金属部材等の費用分として次年度使用額が発生した。
|