研究課題
アブレータの表面損耗を遠隔で検知する計測法をレーザーと分光器を組み合わせて構築した.計測法の原理実証には飛行加熱環境を地上で再現できる超小型トーチ試験装置を使用した.当該装置で円柱型アブレータ供試体を加熱試験する場合,側面部よりも中心軸付近で表面損耗が速く進行するため,側面から表面損耗現象を観測することが難しかった.これを解消するため,光ファイバーを供試体に埋込んでレーザー光を導光し,光ファイバーから射出されるレーザー光を,トーチ近傍に設置した分光器で遠隔計測する方法を試した.ここで,本研究で対象としているアブレーションセンサーの温度・損耗検知部では,芯棒側面に溝を設け,光ファイバーを艤装している.そこで,遠隔検知用光ファイバーも,芯棒側面に新たな溝を設け,温度・損耗検知部の光ファイバー端面と位置を揃えて艤装した.また,材料表面温度条件の適用範囲を広げるため,紫外から可視域のレーザー光波長を使い分けて計測する方法を検討した.温度・損耗検知部の精度検証に使える十分な精度を,本手法が有していることを実験的に確認した.遠隔検知用光ファイバーには,比較的適用範囲の広い紫外光レーザーを導光し,表面温度が異なる3条件に対してアブレーション実験を行った.その結果,温度・損耗検知センサーと遠隔検知法の表面損耗検知時刻は概ね一致することがわかった.また,温度・損耗検知部センサーの材料光検知の増幅回路を改良して温度校正方法を確立し,表面損耗検知時刻での温度計測精度を向上させた.
2: おおむね順調に進展している
当初計画した方法論とは異なったが,レーザーを使った遠隔表面損耗検知法のプロトタイプを確立でき,定常加熱環境でアブレーションセンサーの検知結果と同様な傾向を得ることができたため.
当初の予定通り熱画像計測を適用し,アブレータ材料の遠隔炭化検知法を確立する.幅広い加熱条件に対して材料炭化温度面を捕獲するには,表面付近の高温領域からの赤外光を遮蔽した計測システム開発が肝要であることが予備的な研究でわかっており,この対応策の検討から開始する.また,昨年度開発した遠隔損耗検知法に改良を加えながら計測法に習熟し,定常加熱されるアブレータの表面損耗と炭化を遠隔検知法のみで診断できるか実験により確認する.加えて,アブレーションセンサー計測と遠隔計測を同時に行い,定常加熱時のセンサー検知精度の診断を行いたい.
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
The 32nd ISTS Special Issue of Transactions of JSASS, Aerospace Technology Japan
巻: Vol.19, No.4 ページ: p. 591-597
10.2322/tastj.19.591