研究課題/領域番号 |
21K04478
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
酒井 武治 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (90323047)
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研究分担者 |
石田 雄一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (20371114)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アブレーション / センサー / 大気圏再突入 / 空力加熱 / 熱防御 |
研究実績の概要 |
アブレータの炭化層進展を遠隔で検知する計測法を,赤外線サーモグラフィ(以下,熱カメラ)を使って開発した.本開発では,パワー密度の空間分布が一様な半導体レーザーを加熱源として用いた.供試体は,黒鉛と従来から用いているアブレータの2種類で行った.提案する遠隔検知法では,アブレータの炭化現象を,黒体塗料を塗布した円柱供試体側面の等温面進展として検知する.側面の温度進展で供試体全体の炭化進展を測定できるかなど,提案手法の成立要件を,黒鉛供試体加熱試験などを通して確かめた.他方,アブレータ試験では,供試体表面温度が熱カメラ仕様の上限を超えてしまう問題が発生したが,表面からの光を棒で遮る方法を採用することで回避した.ただし,アドホック法のため供試体表面から2mm程度の炭化層進展が観測できないなど課題も残った. 埋込センサーによる直接法および熱カメラによる遠隔法を並行させて炭化層進展検知実験を試みた.その結果,予想通り,目視で評価した最終炭化層厚さの不確かさ内に,直接法で検知した炭化進展距離が収まった.遠隔法では,723±100K(以下,等温面群)の等温面群の進展で,最終炭化長さを検知できることがわかった.ただし,遠隔法での等温面群の時間進展は,直接法出力の時間履歴と定性的には同じであったが,定量的には満足のいく一致した結果は得られなかった.加えて,遠隔法の等温面群の温度範囲は,これまでに評価した直接法の電気伝導性発現温度よりも300~400K程度低く,予想に反した.遠隔法の方法論は概ね構築できたが,直接法を検証するほどに精度が高いとは言えず,遠隔法の検知範囲拡大とアブレータの大気圧下での炭化現象について今後見直すことで,精度を改善したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現状開発した遠隔炭化検知法では,埋込センサーによる直接法の炭化層進展を精度よく捉えることが予想に反してできず,この原因の考察に時間を要しているため.
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今後の研究の推進方策 |
遠隔法による実験を繰り返し,黒体塗料の高温時の劣化の影響や大気圧下でのアブレータのアブレーション現象についての知見を蓄積しながら,遠隔検知法の精度を見極める.並行して,最終年度に計画した通りに,温度・損耗遠隔検知法との同時計測手順を構築し,飛行環境を模擬した非定常加熱実験を行って,埋込センサーによる直接法の検知精度検証を行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
遠隔検知法の確立に時間を要し,当初予定していた飛行加熱環境模擬に使う酸水素トーチを業者から借用する費用が発生しなかったため. 本年度に,酸水素トーチを長く借用することが想定されるため,その費用として執行する予定である.
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