本年度は,赤外線サーモグラフィ(以下,熱カメラ)単体でアブレーションの炭化と表面損耗を同時計測する方法を,我々が開発した酸水素トーチ加熱試験法を使って構築した。当初は,昨年度までに開発した,レーザーと分光器による表面損耗検知法と,熱カメラによる炭化検知法からなる二つの遠隔計測を組み合わせて,飛行センサーによる直接アブレーション計測を検証する予定であった。しかし,直接・遠隔計測双方の光ファイバーを,表面損耗検知センサー内に多数配置することが難しく,検証実験が当初の計画通り進めることが難しいことがわかってきた.そこで,酸水素トーチ加熱試験法を一から見直した.特に,最大の火炎径で実験できるトーチノズルを選択して,ノズルと円柱供試体の中心軸をこれまで以上に精度よく合わせて位置決めすることで,円柱供試体表面がほぼ一様に損耗することがわかり,供試体側面から表面損耗を観測できた. 期間全体として,実飛行時のような時間的に変化する熱流束に対して,アブレータ熱防御材のアブレーションを遠隔に計測できる手法を新たに開発した.その結果,熱防御材に埋め込んで使う,飛行アブレーションセンサーが計測する,表面損耗および炭化進展の非定常特性を,様々な熱負荷環境で精度検証が原理的にはできるようになった.本研究で使用している熱カメラの空間解像が0.2mm程度に限られてしまうため,トーチ加熱試験で典型的な 0.05mm/s程度の表面損耗現象を観測するには,時間解像性に課題が残った.ただし,高空間解像の熱カメラを導入する,アブレーションを促進することが可能なトーチ試験装置を導入するなど,計測系および試験装置のバージョンアップができれば解決できるものであり,今後の課題である.
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