本研究は、深刻化する宇宙機とスペースデブリの超高速衝突問題に対して、超高速衝突損傷の形成・進展機構を明らかにし、その知見に基づいた衝突損傷制御 法を提案することにより、将来の宇宙機の耐デブリ衝突性能向上に資することを目的としている。 研究を進めるにあたり、「応力場伝播および損傷進展の実時間可視化計測による損傷機構の評価」(2021~2022年度)、「異種界面の導入による応力波伝播挙動の制御および、衝突損傷抑制・制御への応用」(2022~2023年度)のサブテーマを設定しており、前者のサブテーマにおいては、Edge on Impactと呼ばれる衝突実験手法と、散乱光イメージング法および偏光シャドウグラフ法による超高速可視化計測を組み合わせることによる、透明材料内部に形成される超高速衝突損傷の進展過程および応力波の伝播過程の実時間観察手法を構築することに成功した。また同手法を用いることにより、応力波同士および損傷と応力波の相互作用により損傷形成・進展していく過程の観察に成功した。この結果を受けて実施された後者のサブテーマでは、ターゲットの構造を均一構造から弾道軸方向に複数の部材を重ね合わせ接着接合した構造へと変更することにより、ターゲット内部の接合界面が超高速衝突損傷の形成過程に与える影響を評価することに成功している。特に2023年度の成果としては、ガラスに代表される脆性材料の超高速衝突破壊進展において、衝撃減衰層として透明ポリマー材料をターゲット内部に適切な条件で導入することにより、その背後の脆性材料層での衝撃損傷形成・進展を抑制できることを明らかにしている。この成果は、接合・積層条件のデザインにより脆性材料における超高速衝突損傷を制御する方法論につながるものとして期待される。
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