研究課題/領域番号 |
21K04481
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
櫻井 毅司 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (10433179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 圧力増大燃焼 / ガスタービン / パルス燃焼 / 熱効率 / サイクル解析 |
研究実績の概要 |
パルス燃焼と定圧燃焼の2本の燃焼室を組み合わせて使用する本研究の燃焼器では,各燃焼室の燃焼ガスが合流する燃焼器出口において圧力増大を評価することが課題であった.そのため,本年度は燃焼器出口における燃焼ガスの圧力や流速,温度を計測できる観測部を新たに製作した.流速計測には水蒸気の赤外波長吸収特性を応用した半導体レーザ吸収法(TDLAS)の適用を試み,計測光学系を構築した. パルス燃焼が圧縮機やタービンの作動に与える影響を調査した.40サイクル毎秒でパルス燃焼するときのタービン回転数と燃焼サイクル速度を比較したところ,燃焼1サイクルの間にタービン翼は60回転していることがわかった.これはパルス燃焼で生じた高温高圧の燃焼ガスがタービンを駆動しているのはわずかであり,熱効率向上への寄与が非常に小さいことを意味する.パルス燃焼時の圧縮機の作動状態を調べたところ,圧縮機の圧力や流量はパルス燃焼時の圧力上昇によりせき止めのような作用を受けていることがわかった.圧力や流量の変動は燃焼サイクルと同じ周期で非常に大きく変動しており,圧縮機断熱効率が悪化していることが示唆された. 圧縮機やタービンの断熱効率が圧力増大燃焼を応用したガスタービンにどのような影響を持つか調べるためにサイクル解析を行った.圧力増大燃焼では燃焼圧力に加えて燃焼温度も同一の当量比で定圧燃焼した値より高くなる.これが熱効率の向上に寄与していることを明確にした.一方,圧縮機やタービンの断熱効率を考慮し,タービン入口温度の制限を加えると,圧力増大燃焼による熱効率向上の効果は小さくなり,また低い圧力比の場合に限定されることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標であるパルス燃焼による圧力増大およびガスタービン熱効率の向上を実証するところまでには至っていないものの,申請書の研究計画に挙げた①~③の内容を本年度までに全て実施でき,新たな知見を得ることができている.よって,(2)とした.
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今後の研究の推進方策 |
はじめに燃焼圧力の増大有無を検証するために燃焼器出口におけるTDLAS計測をはじめとした燃焼ガス圧力,流速,温度,流量の計測に取り組む.パルス燃焼時には燃焼圧力の上昇が圧縮機やタービンのみならず,2本の燃焼室への空気配分にも影響していることが推測される.これを防止するためにはバルブ等を用いてパルス燃焼時の圧力上昇を燃焼室のみに留めることが有効であり,どのようなバルブ機構を装置に取り入れることが出来るかを検討し,その有効性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は18,909円と少額である.次年度は本申請研究の最終年度にあたり,本年の急激な物価上昇もあるため最終年度に向けて研究費をわずかであるが繰り越すこととした.この繰り越し金は物品購入費に充てる予定である.
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