最終年度にはパルス燃焼による圧力増大割合の評価を目的とした瞬時流量計測と圧力上昇メカニズムの調査に取り組んだ.ガス流量の計測に対して前年度から継続して赤外レーザ吸収分光法の適用を試みたが,燃焼ガスの検出光が加熱された壁面からの熱放射によってマスクされてしまい,有意な結果を得るには至らなかった.この壁面加熱の影響は流量計測のみならず燃焼器内部の現象観察にも影響したため,加熱の影響を受けづらい燃焼器を別途準備し,圧力上昇メカニズムを調べた.その結果,パルス燃焼の圧力上昇は火炎の前方に形成される圧縮波によってもたらされていることが明確になった. 研究期間全体の取り組みの1つとして,パルス燃焼により最大で6.7%の圧力増大が得られることを実証した.この値は研究目標に掲げた5~10%の範囲にあり,研究開始前の2%から大きく前進した結果である.圧力増大を高めるためには,圧縮波を形成する火炎の加速が重要であり,燃料充填率や燃焼ガスのパージが関連することを明らかにした.2つ目の取り組みとして,パルス燃焼モードによるガスタービンの熱効率を評価した.燃焼圧力の増大により出力が増加したものの,タービンを駆動する燃焼ガスの脈動も大きくなったためにタービン効率が低下した.その結果,両効果が相殺し,定圧燃焼の場合と比較して有意な熱効率の向上には至らなかった.また,圧縮機の作動状態もパルス燃焼に伴う燃焼器の間欠的な圧力上昇の影響を受け,作動点が大きく変動し,その断熱効率を損なっていることが明らかになった.このようなパルス燃焼と圧縮機及びタービンを統合したガスタービン運転の作動特性が明らかになった点は本研究の大きな成果である.パルス燃焼に伴う圧力変動やガスの脈動緩和がタービンや圧縮機の効率維持には必要であり,これを改善することが出来れば当初目標に掲げたガスタービン熱効率の向上が実現できる目途を得た.
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