研究課題/領域番号 |
21K04483
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
和田 豊 千葉工業大学, 工学部, 教授 (20553374)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 亜酸化窒素 / 自己発熱分解 / 熱分解 / 事故防止技術 |
研究実績の概要 |
本研究では,亜酸化窒素との反応性が未知である物質を亜酸化窒素雰囲気下に投入し,熱エネルギーを印加することにより亜酸化窒素との反応性を調べ,実験で取得した温度・圧力変化等から不純物が混入した場合における自己発熱分解挙動の開始メカニズムを解明することを目的とする.本年度については,不純物の混入によって亜酸化窒素の分解挙動に与える影響を様々な実験を通して調査を実施した.亜酸化窒素はステンレス製の分解器内に充填され,グロープラグにより加熱,その際,不純物としてエポキシ系接着剤2種類,高真空シール用オイルコンパウンド,シリコンシーラント,ガラス繊維FRP,ポリエステル樹脂を選定しそれらの反応性を検証した.本研究によって得られた結果を以下にまとめる. ・0.5 MPa条件下において亜酸化窒素単体に熱エネルギーを投入したとき,分解は確認できたが,連鎖的・爆発的な反応には遷移しないことが分かった. ・今回実施した全ての試料において,亜酸化窒素雰囲気下に比べ純酸素雰囲気下の方が爆発的な反応の開始温度が低いことが分かった.したがって,亜酸化窒素の分解によって,微量に生じた酸素と各試料が反応し,連鎖的・爆発的な反応が発生する可能性がある. ・有機スズ化合物が亜酸化窒素の自己発熱分解において触媒として作用する可能性が示唆された. ・シリコン系のグリスに使用されているシリコンオイルは,酸素と反応性のある酸化防止剤を使用している場合があるため,酸素や亜酸化窒素の流路や装置にシリコン系グリスを使用することは危険であることが分かった. ・今回使用したシリコン系試料では,シリコン特有のシロキサン結合をもつ物質ではなく,試料に含有していた他の物質が酸素と混触したことで爆発的な反応がみられた可能性が高いことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は以下の3つのテーマの実施を予定している. ・様々な加熱条件におけるN2Oの熱分解特性の定量化:これまでの研究ではグロープラグを用いて大気圧のガス亜酸化窒素を加熱してきた.グロープラグの加熱にはカーバッテリーを用いており,昇温レートなどは厳密には制御していない.また液体の亜酸化窒素を加熱する実験も熱分解特性の定量化には必要であるため,高圧力下においてガス及び液状のN2Oを保持し,制御された昇温レートでそれぞれを加熱,その後,内部の分解率をガスクロマトグラフィーによって定量化する実験を実施する. ・連鎖的自己発熱分解を開始させる熱分解物質の同定:連鎖的な自己発熱分解を生じさせる物質の特定を上記の分解器を用いて実施する.その後,分解を開始させた物質を加熱し熱分解させ,発生したガスをイオン付着イオン化質量分析(IA/MS)装置によって同定を試みる.さらに,原因物質の活性化エネルギを算出するために試料観察示差熱―熱重量同時分析装置(TG-DTA)を用いて熱物性を調査する. ・反応解析ソフトウェアを用いた酸素と熱分解物質の反応性解析:反応性解析では化学反応シミュレーションを行うことで熱分解物質による連鎖反応開始モデルを完成させる.熱分解反応解析のためにシミュレーションChemkin-Pro搭載の熱分解反応解析システムを導入する. これらの内,初年度においてはグロープラグを熱源とした加熱方式を用いて亜酸化窒素を取り扱う上で不純物となりえる物質を選定した反応試験を実施,そして反応物の熱分解物質をIA/MS装置によって同定を試み,シロキサン結合をもつ物質がトリガーとなっていることを明らかにした.以上のことより,加熱実験による反応性の確認及び,熱分解部室調査による自己発熱分解を開始させる物質の一つを同定していることなどからおよそ半分程度の進捗度であるためおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題・展望として以下のことが考えられる. ・より高温・高圧条件下での分解実験の実施:現在は大気圧下での反応実験を実施している.しかし亜酸化窒素は高い蒸気圧を有しており,20℃で約5MPaとなる.従って,亜酸化窒素を利用する際には5MPa程度の雰囲気圧力中で反応が行われる可能性が高い.そこで,より高圧力な環境で反応試験が行えるための耐高圧反応容器を設計・製作し実験を実施していく予定である.また,現在はグロープラグを用いているため600℃程度が最高温度となるが,より高温での反応の有無についても調査すべく,高融点なフィラメントを用いた加熱実験なども合わせて実施する.これらにより,大気圧から5MPa程度の圧力までを試験することで反応モデルの構築に役立てる. ・他のシリコン系のグリスや物質を投入した場合との比較検討:これまでの成果から,シロキサン結合をもつ物質が反応に関与していることが示唆された.従って,他のシリコン系グリスでも同様となるか検証をする他,反応に関与する物質の更なる同定と反応に至るメカニズムを検討するためより多くの不純物を対象に実験を実施していく. ・反応解析ソフトウェアを用いた酸素と熱分解物質の反応性解析:シロキサン結合を有する物質に反応性があることが認められているが,その詳細な反応メカニズムはまだモデル化することができていない.上記に示したような実験を実施することでまずは反応モデルに対して仮説を立て,それにのっとり反応解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを実施し,その結果を実験結果と比較検討する.圧力感度,温度感度,反応温度,反応速度などが一致することを確認していくことで亜酸化窒素の自己発熱分解反応モデルの構築を目指す.
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