亜酸化窒素の自己発熱分解のメカニズムを解明する手段として,グロープラグを用いて各種材料を加熱し,自己発熱分解反応と考えられる急激な温度・圧力上昇が起こるか試験を行った.その後,試験に用いた材料を質量分析し,自己発熱分解に起因する材料の同定を行い下の結果を得た.1.反応した材料には炭化水素系物質が含有されていた.2.フッ素樹脂材料は総じて自己発熱分解反応が見られなかったが,C-F結合の乖離エネルギが高いことが起因している可能が高いと考える.3.黒鉛材料についての反応は粒径が小さいほどに起こりやすく,材料内部への熱伝達の度合が反応に起因すると示唆される.4.炭化水素に付属する官能基種に反応の違いはなく,ニトロ化が反応をさらに促進している可能性が示唆される. これらの結果から,高温のガス亜酸化窒素環境下では炭化水素を含有する物質や数ミクロン程度の黒鉛が含有される材料との混触をさけることで突発的な亜酸化窒素の自己発熱分解反応を防止することができることが解明された.なお,潤滑材はフッ素樹脂系を用いることで自己発熱分解反応を起こさず安全に使用できると考えられる.
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