研究課題/領域番号 |
21K04490
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
野中 聡 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (40332150)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再使用型ロケット / 垂直着陸 / 空力特性 |
研究実績の概要 |
本研究では垂直着陸型再使用ロケットの着陸フェーズにおいて、減速・軟着陸のためのエンジン排気プルームと機体周りの流れの干渉と、機体底面および着陸脚へ与える熱的・機械的な影響を考え、運用システムとして成立する機体形状や姿勢運動を含めた飛行プロファイルなどについて、空気力学および運動力学の観点で考察し、垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や着陸方法の考え方を示すことを目的としている。 1年目の令和3年度においては、再使用ロケットの着陸時における排気プルームを模擬するための風洞実験が可能なスケールモデルを設計するとともに、圧力計測システムの構築とその動作確認を行った。検討のベースとなる機体形状として、宇宙航空研究開発機構において研究が進められている再使用ロケット実験機の機体胴体形状を設定した。風洞実験模型の設計として、風洞内における模型の支持方法、模型表面の圧力分布を計測するための圧力孔分布および圧力センサの取付方法、6分力計測のための内装天秤の取付方法などについて検討した。排気プルームを模擬するため、超音速流れを作り出すためのノズルと貯気槽を模型ベース面および模型内部に設けることとした。ガスの供給方法として、小型気畜器による内部供給型と配管による外部供給型の2方式を検討した。実験に必要な圧力センサの仕様を設定し、計測システムを構築して風洞実験により動作確認を実施した。 風洞実験の試験条件として、実機の減速・着陸運用において機体にかかる空気力の相似を考え、エンジンからの排気プルームと、機体ベース面に対向する気流のそれぞれの質量流束または総圧の比をパラメータとし、これを広く変化させることで、様々な仕様の垂直着陸型ロケットの減速・着陸フェーズにおける機体周りの流れを再現することを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では垂直着陸型再使用ロケットの着陸時において、エンジンから排気プルームが機体底面および着陸脚に与える影響を空気力学および運動力学の観点で考察し、運用システムとして成立する機体底面や着陸脚形状、姿勢運動を含めた着陸プロファイルなど、垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や垂直着陸方法の考え方を示すことを目的として、風洞試験および運動解析による研究を行う計画を示している。1年目に本研究の目的を達成するための風洞実験に用いる供試体の設計と計測システムの構築、2年目に供試体の試作と風洞実験の実施によるデータ取得、3年目に供試体模型の改修と風洞実験によるデータ取得、運動解析を計画している。 1年目の令和3年度の当初計画としては、排気プルームを模擬し、圧力分布を計測することができる模型の設計と試験条件の設定、計測システムの構築を達成する計画としていた。これに対し、ベースとなる機体形状および実験目的を達成するための模型表面の圧力計測方法などを設定するとともに、圧力計測のためのセンサを手配し、計測システムを構築した。また、本研究において最も重要なコンポーネントである排気プルームの模擬機構について検討し、来年度の模型試作の目途を立てた。さらに、特定の機体の仕様に限らず、垂直着陸を行う様々なシステムの環境を考慮し、排気プルームと主流の質量流束比または総圧比をパラメータとする実験条件を設定した。2年目においては、設定された上記仕様および試験条件により、風洞実験模型を試作して、着陸時の排気プルームを伴うロケット周りの気流を模擬し、着陸時の空力特性と流体現象を明らかにする計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は垂直着陸式の再使用型ロケットの着陸時の空気力学および運動力学の係る課題に対して、風洞実験と運動解析により着陸の成立性と繰り返し運用性についての両面に関する知見を得ることを目的としている。 1年目に引き続き、研究代表者が機体形状検討、風洞実験、運動解析の方針、計画、実行を取りまとめて3か年で本研究を行う。また、研究協力者の補助のもとに風洞実験、運動解析を行う。宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所の惑星環境風洞等を利用することで、本研究に関わる空気力学的な課題を早期に抽出するとともに、抽出された課題に対しては空気力学および飛行力学に関して多くの知見を有する研究協力者と協力して対策を行う。 限られた研究期間と経費において効率的に研究を推進するため、風洞実験に供する模型は光造形技術などを利用して短期間・低コストで製作し、データ取得を効率的に進めるなどの工夫をする。また、研究協力者である大学院生に対しては、本研究を題材とした教育にも繋がる研究活動とし、自ら課題を抽出して新たな研究提案ができるような人材の育成にも貢献する。
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