研究課題
Busemannの方法を用いて,矩形形状の流路出口断面を有する三次元インテーク形状を設計し,この形状の風洞実験模型を製作した.風洞実験に供試し,流路の圧力分布計測,および出口での全圧・静圧計測を行った.並行して,風洞実験条件におけるCFD解析を実施した.CFD結果に基づいて算出した圧力分布や,全圧回復率と流量捕獲率のインテーク性能評価指標は,風洞実験結果をよく再現できることがわかった.これにより,CFD解析の妥当性を示すことができた.CFD解析による流れ場の可視化により,流路設計上の問題点として,(1)亜音速ディフューザ部での剥離,(2)超音速ディフューザ部での剥離,があることがわかった.(1)の亜音速ディフューザ部での剥離は,試したほとんどの流れ条件で発生しており,亜音速ディフューザ部の流路形状設計の改善の必要性が示唆された.(2)の超音速ディフューザ部の剥離は,インテーク背圧が低い場合や,流入マッハ数が大きい場合には起こらないケースがあることが判明した.このことは,境界層厚さ分をオフセットさせることで,剥離を抑制できる可能性を示唆するものである.また,Busemannインテークを機体側面に搭載すると,スピレージ流が制限されることを考慮して,インテーク形状の切り欠きを塞いだ形態を,風洞実験で供試した.スピレージ流制限の影響は,流路での剥離の影響に比べると大きくないことがわかった.すなわち,超音速ディフューザ部で剥離が生じないよう,境界層厚さ分をオフセットする流路形状補正を行った上で,亜音速ディフューザ部の流路形状の改善を図ることで,インテーク性能を大幅に向上させることができる見通しを得た.
2: おおむね順調に進展している
CFD解析が,風洞実験の結果をよく再現できることが確認できたため.CFD解析により,内部流れを可視化することができ,そこから得られる情報から,今後の改善方針,対策方針を検討できたため.
これまでの研究で見通しを得た,流路形状補正の効果を,主としてCFD解析により評価していく.代表的な流路補正を行った形状の風洞実験模型を製作し,風洞実験結果を得ることで,流路補正の効果を実証する.
インテーク風洞実験模型に,流量調節機構を設ける改修を実施したが,この改修が想定より安価に済んだため,次年度使用額が生じた.翌年度は,流路形状を補正,修正したディフューザー部の模型部品を製作することとしており,これに次年度使用額を充てる予定である.可能であれば,流路形状部品を2ケース製作し,その際による効果,影響を評価することを考えている.
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