研究課題/領域番号 |
21K04492
|
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
張 科寅 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (40710596)
|
研究分担者 |
渡邊 裕樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (30648390)
杵淵 紀世志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90648502)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 宇宙機用推進 / 電気推進 / 二酸化炭素 / ホールスラスタ / 代替推進剤 |
研究実績の概要 |
二酸化炭素(CO2)推進剤用のホールスラスタと、ドライアイス貯蔵供給装置の設計試作及び試験を進めた。ホールスラスタ本体については、純CO2推進剤で安定した着火・定常作動が可能であることを確認できた。ただし中和器はCO2適合性がない熱電子放出式ホローカソードを用いているため、キセノンガスを作動流体とした。CO2質量流量2.6~8.1 mg/s, 放電電圧100~200 V, 放電電力700~1600 Wの広範囲にわたって推進性能をパラメトリックに取得し、比推力最大1140秒/推力電力比最大27mN/kW(中和器や電磁コイルが消費する作動ガスや電力を含む)といった推進性能を得た。 貯蔵供給装置については、CO2をドライアイスとして低温貯蔵し、固相と液相と気相が共存する三重点を利用することで、高圧貯蔵や調圧不要な貯蔵供給システムを構築可能とするコンセプトである。単体試作試験により、60分以上三重点維持し、1kW級ホールスラスタの作動に必要な流量を供給可能であることがわかった。流量供給によるエンタルピー流出と、ドライアイス貯蔵タンクへの環境入熱のバランスに基づく、軌道上運用を模擬した数理モデルを開発し、最小限のタンクヒータ入熱により軌道上運用できる方策を見出した。また、タンク内の可視化により、三重点維持時間が理論より短くなる原因が、タンク内の温度分布が不均一にあると特定し、伝熱促進フィンの追加により、大幅に三重点維持時間が延びることを確認できた。これらの主要成果を論文投稿し、雑誌に掲載された。 さらに、以上のCO2ホールスラスタ本体と、ドライアイス貯蔵供給装置を双方真空チャンバにいれた統合試験により、作動デモンストレーションを実施した。ドライアイス貯蔵供給装置から三重点維持により定圧で供給されたCO2ガスにより、1kW級ホールスラスタ本体が問題なく放電・推力発生することを確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO2推進剤用のホールスラスタと、ドライアイス貯蔵供給装置について、進捗状況の項の通り、どちらも計画通りに進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、CO2ホールスラスタとドライアイス貯蔵供給装置について、実験評価, 計測, 数値解析を進めることで、軌道上での実用に向け、物理現象の把握及び課題の洗い出しを行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CO2貯蔵・供給装置について、慎重を期して既存品を用いた要素試験を通して設計を進めており、ものづくりを一部後ろ倒しにした。全体の計画に影響はない。
|