研究課題/領域番号 |
21K04494
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
行松 和輝 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (30867966)
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研究分担者 |
横山 創一 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (40811211)
後藤 亜希 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (90794074)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原子状酸素 / シルセスキオキサン材料 / 耐原子状酸素性材料 |
研究実績の概要 |
地球低軌道には原子状酸素(AO)が存在し、高分子材料はAOとの衝突により、浸食・劣化が起こることが知られている。本研究では、新規耐AO性材料の創出に向け、有機無機ハイブリッド材料であるシルセスキオキサン含有材料(POSS材料)の有機官能基の化学構造に注目した。異なる有機官能基をもつPOSS材料とAOとの反応量を明らかにすることで、POSS材料の耐AO性材料としての分子設計の最適化を目指している。 本研究は、①:POSS材料の有機ユニットの化学構造の違いがAOとの反応に与える影響評価、②:新規耐AO性材料の設計・合成・評価の2つから構成される。2022年度は項目①として、フルオロアルキル基またはアルキル基をそれぞれ修飾したPOSS材料を合成、Si基板に成膜し、AOとの反応量データの取得を引き続き実施した。これらの試料に対して、AO照射を行い、照射に伴う質量変化量や表面状態およびシリカ形成厚さを、それぞれ電子天秤、XPS分析やTEM分析、光学顕微鏡観察やSEM観察にて評価した。その結果、同一程度のフルエンスにおける質量減少量やシリカ形成厚さは、フルオロアルキルPOSSの方が大きい傾向が確認された。そのため有機官能基のAO浸食率のみで、POSS材料の反応量を決定できないことが分かった。この要因として、POSS材料の無機骨格間距離が影響を与えていると考え、成膜した薄膜のXRD測定を行った。その結果、面内方向の無機骨格間距離が大きい材料の方が、シリカ形成厚さが大きい傾向が見られた。これに加えて、項目②として、ポリイミドに対する塗布性を考慮した新規材料の合成の検討や、AOとの反応量評価にも一部着手した。次年度以降も引き続き、評価を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、AO照射実験を行い、フルオロアルキルPOSSとアルキルPOSSのAOとの反応量が異なることを明らかにできた。またその要因として、POSS内の無機骨格の距離に注目して、その距離とAOとの反応量の傾向が一致していることを明らかにできた。そのためおおむね順調に進捗していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
項目①について、AOとの反応量に影響を与えた要因の中で、無機骨格間距離が影響していることが分かった。引き続き、異なる有機官能基を持つPOSS材料を合成・成膜し、無機骨格間距離とAOとの反応量などの評価を進める。またAO照射後の表面状態などの評価も進める。 また項目②について、項目①より明らかになったことを基に、新規材料の分子検討、合成などを行い、AO耐性を評価し、宇宙環境での利用可能な材料開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
原子状酸素照射実験の準備や実施に予定より時間を要し、一部の照射実験の実施や照射後試料の分析が遅れた。残額については、2023年度に、新規材料の合成およびAO照射実験関連、AO照射前後の試料の分析に使用する計画である。
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