研究課題/領域番号 |
21K04508
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
稲葉 祥梧 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (20758263)
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研究分担者 |
篠野 雅彦 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (00392689)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 音響測位 / 音響画像 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究では、従来水底面の音響画像観測に用いられてきたサイドスキャンソーナーに対し、深層学習を利用した物体検出技術を組み合わせる事で、水底設置物やAUV等の特定の物体の測位を可能とする事を目的としている。具体的には、測位対象となる物体に対し事前に音響画像からなる深層学習用の学習データを構築・学習し、水底面の音響画像観測中に捉えた対象を自動的に検出する事で測位を行う。 令和3年度は本研究で用いる物体検出アルゴリズムの選定と環境構築を行い、検出対象の音響画像を模擬した低解像度のグレースケール光学画像を用いて物体検出の可否やその精度を検証した。検証の結果、光学画像の分野で広く応用が進んでいる「YOLO v5」アルゴリズムについて良好な検出結果が得られたため、以降はこのアルゴリズムを本研究で用いる事を基本方針とした。 次に実際のサイドスキャンソナー画像から「YOLO v5」アルゴリズムを用いた物体検出が可能である事を実証するため、実海域にてサイドスキャンソナーによる海底設置物の計測を行い、学習用の教師データの構築と学習による物体検出の実証を試みた。検出対象となる海底設置物として、コンクリート製で立方体の錘を選び、同物体のサイドスキャンソーナー画像を複数計測し、これについて学習と検出を行った。その結果、周囲にがれき等の物体が存在する音響画像においても、立方体の形状の錘を検出可能である事が確認できた。 また、この時計測した錘の中には、頂上面が膨らんだ形状の錘と平坦な錘の2種類が存在した。この2種類を分別した上で改めて学習と検出を試した結果、音響画像内で形状の似通った両者を識別可能であるという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究で用いる物体検出のアルゴリズムの選定および環境の構築と検出能力の検証を行った上で、実際に海底に設置されている人工物を対象としたサイドスキャンソーナーによる音響画像計測およびこれによって得られた音響画像を用いた学習と検出を実施している。 物体検出アルゴリズムの選定・検証を通して教師データの構築や学習の設定パラメーター等について知見を得た。また、実海域で計測した音響画像からの物体検出を実施したが、その結果海底に設置された立方体の錘の微妙な違いが物体検出により判別できた点は重要な成果である。 以上より、本研究は概ね当初の計画通りに推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では次年度以降、小型のAUVを対象として教師データの構築・学習と音響画像内からの検出を実施する計画である。今年度の実証では海底に既設の人工物を対象としたため、教師データの構築は事後処理とせざるを得ず、また計測できた音響画像の枚数の制約から構築できた教師データは比較的小規模であった。しかし計測対象を小型AUVとする事で、次年度からは水槽環境等で事前に教師データ用の音響画像計測を行い、より多数の画像からなる大規模な教師データを構築した上で実海域で計測した音響画像への検出処理が可能となり、検出精度の向上が期待できる。 以上により得られた成果を取りまとめ、学会での発表や学術雑誌への投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスを背景とする世界的な半導体不足の影響のため、音響画像計測実験で用いるサイドスキャンソーナーを購入ではなくレンタルにて確保したため、サイドスキャンソーナー購入のため確保していた予算が残った。繰り越した予算は次年度の音響画像計測実験で使用する予定である。
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