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2021 年度 実施状況報告書

北極海航路における海氷による航行障害特性の把握

研究課題

研究課題/領域番号 21K04511
研究機関北海道大学

研究代表者

大塚 夏彦  北海道大学, 北極域研究センター, 特任教授 (50520201)

研究分担者 平田 貴文  北海道大学, 北極域研究センター, 特任准教授 (80576231)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード北極海航路 / 航行障害 / 変形氷 / リモートセンシング / 北極海
研究実績の概要

本年度は、①変形氷域を特定するための衛星データの収集と基本的な分析、②航行実態と海氷による航行障害事例を把握するための船舶航行軌跡の収集と整理、ならびに海氷状況と実際の航行速度の関係の基本的な分析を行い、本研究の主目的である変形氷域およびそれによる航行障害の把握を行うための基本的な知見を得るとともに、実際的な研究手法について検討した。
①については、C-Band合成開口レーダー(SAR)観測データ(Sentinel-1)において、Beaufort Gyre Exploration Project(BGEP)がボーフォート海で実施している海氷ドラフト観測点を含む観測データを抽出し、顕著な変形氷と思われる大きな海氷ドラフト観測時における、SAR観測における後方散乱係数ならびに氷盤等の状況を比較分析した。これより、長径が5~40kmとなる平坦で大きな氷盤が連なる海域において、氷盤の間で局所的に後方散乱係数が大きくなる数km程度の範囲の氷域が認められ、これが大きなドラフトを呈する変形氷域であることが予想された。
②については、北極海航路を航行した貨物船の航行記録(衛星AIS)と、航行時の海氷状況(TOPAZ4 データ同化システム)を収集整理し、氷海航行におけるリスクマネジメントシステムPOLARIS(国際海事機関IMOによる)を用いて、船のアイスクラスと海氷状況より算出されるリスクインデックスRIOを求め、実際の航行速度と対比した。この結果、海氷による航行障害の発生事例において、RIOは航行障害による速度低下事象と比較的よく相関するが、ここで用いている密接度と氷厚だけでは十分に説明できないこと、氷盤サイズや密集度および局所的な変形氷域の影響を考慮する必要性を認識した(学会発表)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1)本研究で取り上げたC -Band SARでは、衛星軌道に近く入射角が大きくなるサブスワスにおいて、後方散乱係数が全般的に大きくなる場合が見られ、単純に後方散乱係数の値だけで変形氷域を判別することには問題があることが判明した。そこで、同じサブスワス内で氷域の状態と後方散乱係数の特性について、海氷ドラフトの現地観測値(BGEP)や可視画像等を併用して分析を実施している。このため、変形氷域の分析に時間を要している。一方、北極海における変形氷域の実態を把握する上で、詳細な情報の集積が可能となり、これを北極海航路における航行障害事例の検証に取り入れる予定である。また、衛星による氷況観測とBGEPによる海氷ドラフト観測値との比較により、北極海の海氷状況をこれまでよりも詳しく把握できる見通しを得た。
(2)北極海航路における海氷による航行障害事例を得るために、2019~2021年にわたる3年分の衛星AIS航行記録を新たに取得した。各年とも、北極海とその隣接海域には約3万隻の船が入り込んでいるため、今年度は航行記録の整理に時間を要した。ただし、既往の航行記録から航行障害事例を発見し、海域や基本的な海氷状況の把握とともに、既存の航行リスクパラメータの適応性について検証し、(1)と合わせて、海氷状況に応じた航行障害リスク分析の準備を整えることができた。

今後の研究の推進方策

(1)既往のL-Band SARを用いた研究では、オホーツク海の流氷に関して、後方散乱係数と変形氷域を含む海氷域の状態との相関性が指摘されている。これと同様の分析が、より変化の顕著な北極海の変形氷域に対してC-Band SARを用いて可能か、BGEPによる海氷ドラフトとSARおよび可視画像情報との相互比較により検討する。その際、変形氷域の検出には、周りの平坦な氷域の状況、氷群の漂流ベクトルと密集度、変形氷域の状況、C-Band SARの特性などを考慮に入れて検討する。
(2)衛星AISによる北極海航路の航行記録から海氷によると思われる航行障害事例を抽出、その際の氷況について、衛星観測によるSARおよび可視画像データ(Sentinel)、氷盤漂流ベクトル・密接度・氷厚(マイクロ波放射計AMSR2およびTOPAZ4)データを収集し、航行障害リスクの高まる氷況条件を分析する。SAR と可視画像からは、変形氷域の有無、氷盤サイズなどの抽出に取り組む。またマイクロ波放射計データからは、対象海域における氷群の集中度合を漂流ベクトル等を用いて分析する。
(3)これらの知見をもとに、海氷による航行障害を評価するパラメータについて、既往のリスクインデックスRIOや氷海航行時の海氷抵抗式などをもとに検討する。また、得られたパラメータを用いて、北極海航路区間における航行障害リスクの分布・出現状況を可視化し、船社などからのフィードバックを得て、実際的な研究成果として発信することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

理由:参加を予定していた国際学会が新型コロナウィルス流行拡大のためにオンライン開催となり、旅費が不要となった。
使用計画:2022年度もオンライン開催となる可能性があるため、対面開催を予定している国内学会への参加経費として執行する。また、国際誌への論文投稿費として執行する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Environmental sustainability of Arctic shipping through potential HFO-banned areas along the NSR2021

    • 著者名/発表者名
      Chathumi Ayanthi Kavirathna, Ryuichi Shibasaki, Wenyi Ding, Natsuhiko Otsuka
    • 雑誌名

      The 26th International Conference on Port and Ocean Engineering under Arctic Conditions

      巻: 26 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vessel speed optimization considering the environment and economic perspectives of Arctic Shipping2021

    • 著者名/発表者名
      Chathumi Ayanthi Kavirathna, Ryuichi Shibasaki, Wenyi Ding, Natsuhiko Otsuka
    • 雑誌名

      Proceedings of the International Association of Maritime Economists (IAME 2021)

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 海氷状況による北極海航路航行船舶の航行可能速度の検討』、第37回寒地技術シンポジウム2021

    • 著者名/発表者名
      大塚夏彦、泉山 耕
    • 雑誌名

      寒地技術論文・報告集

      巻: 37 ページ: 45-50

  • [学会発表] Environmental sustainability of Arctic shipping through potential HFO-banned areas along the NSR2021

    • 著者名/発表者名
      Chathumi Ayanthi Kavirathna, Natsuhiko Otsuka
    • 学会等名
      The 26th International Conference on Port and Ocean Engineering under Arctic Conditions
    • 国際学会
  • [学会発表] Vessel speed optimization considering the environment and economic perspectives of Arctic Shipping2021

    • 著者名/発表者名
      Chathumi Ayanthi Kavirathna, Natsuhiko Otsuka
    • 学会等名
      Annual Conference of International Association of Maritime Economists (IAME 2021)
    • 国際学会
  • [学会発表] 海氷状況による北極海航路航行船舶の航行可能速度の検討』、第37回寒地技術シンポジウム2021

    • 著者名/発表者名
      大塚夏彦
    • 学会等名
      第37回寒地技術シンポジウム

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公開日: 2022-12-28  

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