現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
付着期幼生が近赤外光を忌避する効果を実海域で検証する実験を実施したが、顕著な忌避効果が確認できなかった。計数用平板と、光源を固定したもう1枚の平板を互いの平面が平行になるように固定し、平板の表面と海面とを垂直にして浸漬した実験(近赤外光は岸壁側から海側へ照射)を2回、平板の表面と海面を平行にして浸漬した実験(近赤外光を海底方向へ照射)を1回行った。計数用平板の中央位置と相対する位置に、最大波長940 nmのLED4個(放射角: +-45度)から構成される基盤を固定し、LED4個を発光させた(直流10.2V,1A)。LED先端と計数用平板の間を4 cmとした。計数用平板の平面1,587.4 m2(ワッシャ4個12.6 cm2を除く)を計数対象とした。 計数用平板を海面に対し垂直に浸漬した結果、着生した個体数は光源存在下2,717個体、非存在下3,049個体(2023年6月27日~7月7日)、光源存在下16,781個体、非存在下14,353個体(同年7月8日~7月14日)であった。海面に対し水平に浸漬した結果、光源存在下15,888個体、非存在下19,067個体(2023年7月17日~7月20日)。計数用平板の中央に到達する近赤外光の放射強度は、空気中では278.6 W m-2(浸漬1回目)、286.1 W m-2(浸漬2回目)、255.0 W m-2(浸漬3回目)であった。光源直下では検出上限値(約4,000 W m-2)以上であった。海水中での光源から4 cm離れた位置の近赤外光の透過率を、透過率が距離に対し指数関数的に減少すると仮定し、950 nmの光が水中を22 mm進んだ時の透過率76.7%を参考に56.0%と見積もると、平板中央に到達する放射強度は概ね153 W m-2であろう。 近赤外放射光が白昼であっても付着期幼生に対し、忌避効果を発揮できる浸漬の工夫が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
最大波長940 nmのLED4個を固定した基盤(ILH-IO04-94SL-SC211-WIR200(放射角: +-45度、Intelligent LED Solutions社製)を4つ、40 cm四方の同一平板の中央に近づけて左右対称位置に固定し、4基盤のLEDs計16個を発光(直流10.2V, 4A)させる。 計数用平板と光源を固定した平板を海面に水平となるように浸漬し、海面に近い方に計数用平板を固定し、着生面を海底に向けて浸漬する。こうすることで、海面に垂直になるように平板2枚を浸漬するより、計数用平板の表面へ入射する太陽光を大幅に減らすことができる。 2023年度実施時に使用した基盤(LED4個が基盤に固定されている)(直流10.2V, 1A)による付着期幼生の着生阻害実験結果が、近赤外光の付着期幼生に対する忌避効果を明確に定量できなかったことを踏まえ、2024年度は、基盤4個を使用し、近赤外光の照射によって、付着期幼生の計数用平板への着生が阻害されることを定量的に示す。
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