研究課題/領域番号 |
21K04521
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
関口 秀紀 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (80415843)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プラズマ支援着火・燃焼技術 / マイクロ波 / アンモニア |
研究実績の概要 |
近年、大気中の温室効果ガス(GHG: greenhouse gas)濃度の増加に起因する気候変動により、洪水、干ばつ、豪雨、高潮などの自然災害の発生が増加することが懸念されています。このGHGの中で、石油や石炭、天然ガスなどの炭化水素燃料の燃焼などによって排出されるCO2は、気候変動の主要因と考えられています。そこで、本研究課題では、従来、炭化水素燃料を利用していた内燃機関から排出されるGHGを低減するため、燃焼時にCO2を排出しないアンモニア(NH3)ガスを燃料として利用する技術開発を行っています。具体的には、炭化水素燃料と比べて着火温度が高く燃焼速度が遅いNH3と空気(Air)の予混合ガスの燃焼特性(着火性および燃焼性(火炎伝播速度等))を改善する手法として、マイクロ波プラズマ支援着火・燃焼技術を適用し、NH3燃焼時の一酸化二窒素(N2O:GHGの1つ、二酸化炭素の約300倍の地球温暖化係数を持つ)の生成を抑制しながら、NH3・Air予混合ガスを安定・高効率に着火・燃焼させる技術を開発することを目的としています。 初年度である令和3年度は、腐食性および毒性のあるアンモニア(NH3)ガスを取り扱うため、安全性を考慮したNH3ガス供給・排出設備を構築すると共に、製作したマイクロ波プラズマ生成装置を取り付けたNH3・空気(Air)予混合ガスバーナー着火・燃焼実験システムを構築しました。この際、マイクロ波プラズマ生成装置による供給ガスのプラズマ化を確認する試実験を行いました。本試実験では、供給ガスとして、アルゴン、空気(Air)、メタンを用い、本実験装置がこれらのガスをプラズマ化できることを確認しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である令和3年度は、腐食性および毒性のあるアンモニア(NH3)ガスを取り扱うため、安全性を考慮したNH3ガス供給・排出設備を構築すると共に、製作したマイクロ波プラズマ生成装置を取り付けたNH3・空気(Air)予混合ガスバーナー着火・燃焼実験システムを構築しました。この際、NH3・空気(Air)予混合ガスの燃焼特性を調査するため、各種計測装置(火炎傾斜角法による層流燃焼速度を計測するための火炎画像取得用光学カメラ、プラズマ中の燃焼促進物質特定用マルチチャネル分光器、排ガスの成分分析装置(ガスクロマトグラフィ)等)を設置した計測システムを構築しました。 また、マイクロ波プラズマ生成装置による供給ガスのプラズマ化を確認する試実験を行いました。本試実験では、供給ガスとして、アルゴン、空気(Air)、メタンを用い、本実験装置がこれらのガスをプラズマ化できることを確認しました。一方、本マイクロ波プラズマ生成装置において、プラズマ化した際に生じる熱により、プラズマ生成部内のアンテナを固定するための半田が溶解し、アンテナが倒れることが確認されたため、アンテナを圧着により固定する構造へ変更するためのマイクロ波プラズマ生成装置の改造を進めています。 これらの研究の進捗から本研究課題は、「(2) おおむね順調に進展している」と考えています。
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今後の研究の推進方策 |
次年度となる令和4年度は、マイクロ波プラズマ生成装置の高温に対する耐久性を向上する改造を行うと共に、NH3ガス単体のプラズマ化の可否を確認し、NH3ガスのプラズマ化による水素改質の可能性を検証することを検討しています。また、NH3・空気(Air)予混合ガスに対するプラズマ化の有無からマイクロ波プラズマ支援着火・燃焼技術の有効性(着火の可否、燃焼速度の向上、および排ガス成分分析(未燃NH3、NOx、およびN2O生成量))の確認を行う予定です。さらに、NH3・空気(Air)予混合ガスバーナー着火・燃焼実験システムまたはマイクロ波プラズマ生成装置への入力電力やNH3・Air予混合ガスの当量比・流速を調整し、その着火・燃焼に対する有効適用範囲(着火の可否、燃焼速度の向上、および排ガス成分(未燃NH3、NOx、およびN2O生成量)を検証する予定です。この際、火炎の写真撮影から火炎傾斜角法を用いて層流燃焼速度を計測すると共に、マイクロ波プラズマにより生成される燃焼促進物質の特定、排ガス成分(未燃NH3、NOx、およびN2O生成量)計測を行い、マイクロ波プラズマ支援着火・燃焼技術の効果および有効適用範囲を明らかにすることを目標としています。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、腐食性および毒性を持つNH3ガスと空気の予混合ガス供給設備(NH3ガスおよび空気の流量制御装置、耐NH3ガス用レギュレータ・配管等)を構築すると共に、マイクロ波熱平衡プラズマ生成装置が生成するプラズマ電力を制御するためのインバータ式プラズマ生成用電源の開発(電源回路構成、回路図作成、回路・部品選定等を実施済み)を行う計画でした。また、排ガス中の亜酸化窒素(N2O)や未燃NH3ガス、窒素酸化物(NO、NO2)を計測するためのガスクロマトグフィ、およびその校正用を含む各種ガスボンベを準備する計画としており、それらを設備備品費および消耗品費として計上すると共に、出張のための旅費を計上していました。 一方、物品費に関しては、所属機関の既存計測機器(ガスクロマトグフィ)が利用できたために残額が生じ、旅費に関しては、コロナ渦により、出張予定を取りやめたために生じた残額です。 これらの残額については、次年度以降、本研究課題を円滑に推進するために必要となる物品購入等(主に構築した装置の改良)に適正に使用する予定です。
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