研究課題/領域番号 |
21K04523
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
山田 安平 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (90443241)
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研究分担者 |
馬 沖 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (30773197)
藤 公博 九州大学, 工学研究院, 助教 (80790716)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スラミング / 流体構造連成 / ホイッピング / 船体損傷 / 船体折損 / コンテナ船 |
研究実績の概要 |
本年度は、解析手法の適用・高度化に注力した。ICFD手法をスラミング解析や波浪中船体応答解析等に適用し、流体構造連成を考慮した様々な数値計算が本手法にて推定可能であることが確認できてきた。これまでに得られた主な知見は以下のとおり。 (1)数値水槽(約1000m×1000m)及び8000TEUのコンテナ船の全船モデル(弾塑性体)を用いて、規則波・不規則波中の船体動揺シミュレーションを実施し、安定かつ現実的な時間で解析可能であり、かつ、流体構造連成により縦曲げ応力も推定可能であることを確認すると共に、波高・波長・波向きを変えたシリーズ計算を実施した。また、外板に衝突等による穴を作成して解析を実施し、航行中の浸水計算についても考慮可能であることを確認した。 (2)8000TEUのコンテナ船の船首バウフレア部縮尺模型及び大型落下水槽を用いて、落下実験を実施した。縮尺模型については、3Dプリンタを用いて製作すると共に、無線式加速度計を用いてスラミング衝撃前後の加速度を計測し、水面に突入する様子を複数台の高速度カメラで計測し、バウフレア部のスラミング衝撃現象の高精度撮影に成功した。 (3)実コンテナ船のバウフレア部船首部構造に関して,ICFD手法によるスラミング解析を実施し,従前より広く用いられてきたALE手法と同等の結果をより短時間で得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ICFD解析を用いて、流体構造連成を考慮した ①8000TEUのコンテナ船の船首モデル(弾塑性)を用いたスラミング解析、②コンテナ船全船モデル(弾塑性)での規則波中3次元船体応答解析、③規則波中の2次元船体梁の動的応答解析、が現実的な時間で解析可能であることを確認した。昨年度課題となっていた、解析の安定性については、ビーム要素を削減する等により各段に向上することが分かった。 (2)3Dプリンタを用いて、船首バウフレアの模型を製作し、落下実験を成功することができた意義は大きい。一方で、ICFD手法の推定精度について、粒子法との比較では概ね良好な相関が得られているが、水圧等の精度について、今後、更なる模型実験を実施し検証していく必要がある。 (3)陰解法であるICFD手法を用いて陽解法のALE手法と概ね一致した結果が得られることを確認できた。ただし、解析ソルバーの制約上、圧力を過大に推定する領域が存在するため、その点に留意しながら検討を重ねていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ICFD手法を適用して、船舶に係る流体構造連成を考慮した様々な数値計算が可能であることがさらに一層確認できた。とりわけ、①数値計算の安定性向上、②損傷時の船体動揺+浸水計算も可能であることが確認できた。一方で、ICFD手法特有のモデル化手法(表面メッシュ)については、特有のモデル化手法・ノウハウが必要であり、これらの知見をさらに一層蓄積し、ロバストな解析手法の確立を目指していく予定である。合わせて、長時間計算実施のために、大規模PCクラスター・システムの拡充・更なる高度化についても検討していく予定である。 (2)実船スケールでの数値水槽も完成しており、将来的に、どのような構造物(船舶)も比較的簡便に波浪中の動的応答を再現することが可能となればと考えている。 (3)船首スラミングの模型実験について、追加実験を計画している。第1回は、Bluetoothを用いた無線式加速度計の有効性を確認した。追加実験では、水圧計測を追加すると共に、水圧についても、無線式で計測できないか検討する予定である。 (4)妥当性検証のため、複数機関・研究者・手法でのベンチマーク解析について検討中である。(5)ICFD手法の結果を援用しながら簡易的にスラミング圧力を推定できる方法を確立するための検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で模型実験の準備・実施が遅れ、1期間(2日間)しか実験を実施できなかった等のため。
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