本研究は,認知プロセス分析における眼球運動データの適切な解釈に向けて概念として提案されている逆推論型のアプローチを実装し,これを胸部XP画像診断における医師の診断業務に適用可能な認知タスク分析方法論として構築すること,およびその適用を通して診断技能の解明に資することが目的である.最終年度である本年は,成果の取りまとめを行った.これまでの成果を総合し,XP画像診断(単一の画像に対する診断,および経年変化を観察できる複数画像に対する診断)において医師が用いている方針,方略に対応する典型的な注意の推移パターンを得て,観察されるパターンから医師の内的処理を推測する手順について整理をした.アプローチの適用によって明らかとなった熟練医師の診断の方略,およびこれらと経験の異なる医師,ならびに研修医との違いに関する知見についてもまとめた. さらに,本研究の知見を活用し,継続・発展に向けた新たな研究の前準備として,救命救急センターにおけるリスク認知を対象とした予備的実験を実施した.救命救急におけるシーンを対象に,潜在するリスク・ハザードの発見をタスクとした実験を,経験と専門が異なる医師と看護師を対象に実施した.得られたデータについて,これまでの研究で構築した逆推論型の解釈アプローチを援用し,データ分析を一部実施した.これらの成果の一部について,国際会議で発表した.
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