研究課題/領域番号 |
21K04539
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 桂一郎 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (40321418)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超硬合金加工 / ロバストパラメーター設計 / 波形解析 |
研究実績の概要 |
超硬合金の加工時に得られた各種データより,加工品質の良し悪しを評価することができれば,生産の手戻りなどを解消でき,コスト削減に寄与することができるのではないかと考え,加工品質の評価として,積算加工電力量と加工重量との比較から加工品質の評価を行った。最終的には,その結果と加工時の振動波形データの評価結果との比較を行うことで,加工時に加工状態を把握することを目的としている。 先行研究の文献調査において,加工後の品質特性を用いた評価と,加工電力量を用いた評価で再現性のある実験が行われていることが分かった。そこで,両者を比較する研究を行うこととした。先に述べた通り,主に鍛造用金型の材料である超硬合金を対象として,これらの材料の加工を行った。加工条件は多岐にわたるため,効率的な実験を行うために,JIS Z 9061(2016)で規定されているパラメーター設計の手法を用いて,L18直交表に割り付けて実験を行った。できるだけ多くのデータを取得するために,直交表に割り付けた加工条件による加工結果について,加工中の電力,加工時の振動波形のデータの取得に加え,加工後の評価として,加工量の測定と真円度測定を行った。 ここで,パラメーター設計の実験結果から,本研究で対象とした加工の最適な条件を把握することができれば,再現性のある評価方法を選択し,同時測定している振動データと実験結果との比較により,加工中に,加工状態の良し悪しをモニタリングできることになる。そこで,真円度測定による評価と,加工中の電力量と加工量を入出力とした評価との比較を行うことにした。 ・研究背景に基づいて実験を計画し,パラメーター設計の手法を用いた実験を行った。 ・真円度評価と電力評価を行った。SN比で再現性が得られなかったが,電力評価の感度において傾向の一致と,絶対値のおおよそ整合した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで行ってきた実験より,真円度評価の確認実験の結果と,電力評価の確認実験結果に示すSN比の利得を比較すると,再現性があるとはいえない。真円度評価では,4つの条件に水準の設定値に対して計算結果が整合しなかった。電力評価では,5つの条件に水準の設定値に対して計算結果が整合しなかった。このことからも,SN比が再現しなかったことが推察された。実験方法について,誤差因子の効果が出やすいような工夫をはじめとして,研削加工の評価については,さらに検討が必要であることが分かった。一方で,電力評価の感度については,約2dbの利得が得られた。ここで,先行調査を行った文献のうち,感度の再現性の考え方について言及があるものがあり,今回の実験においても,感度を重視して条件を選定することによって,品質特性のばらつきも減少して加工ができるのではないかと考えられた。実験では,エネルギーの次元の関係から平方根を取って計算を行っている。仕事量の次元で評価した場合には,傾き(感度)に改善効果が見られたため,加工効率が向上し,効率の向上に伴って,ばらつきも低減するのではないかと考えられた。したがって,本実験においては,感度の評価が重要であることが分かった。ここで得られた結果を踏まえ,同時に取得した,エネルギーデータである振動波形についても解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
超硬合金の加工について,加工時に取得できる振動波形データから加工状態を把握できるようにするための基礎データとなる加工条件の評価を行った。まず,研究背景に基づいて実験を計画し,パラメーター設計の手法を用いた実験を行った。実験結果より,真円度評価と電力評価を行った。SN比で再現性が得られなかったが,電力評価の感度において傾向の一致と,絶対値のおおよそ整合した。再現性は得られなかったが,感度評価を優先で条件を定めていくことで,適切な加工条件が評価が可能であることをが分かった。この結果を用いて,同時測定している振動データとの比較を行い,加工時の状態をモニタリングしながらの加工について検討を行うこととした。最終的には,これらの結果を踏まえ,加工時の振動波形データから,加工時に加工の良し悪しを把握し,生産コスト低減のための仕組みを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては,研究打ち合わせ等の旅費がコロナ禍によりリモートで実施できたこと。昨年度構築した計測システムで,資料のみを購入し実験を行えたこと。計算などは現有のPCで行ったために交付額からの差額があった。次年度は,学会発表等の旅費,確認実験等の材料費,論文投稿料などを見込んでいる。
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