研究課題/領域番号 |
21K04544
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
張 勇兵 筑波大学, システム情報系, 教授 (80242353)
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研究分担者 |
亀田 壽夫 筑波大学, システム情報系(名誉教授), 名誉教授 (10011660) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 通信資源の割当 / ルーティング / 光通信技術 / 数理計画手法 / 性能評価 |
研究実績の概要 |
次世代無線通信ネットワークは低い通信遅延と高速なデータ通信のほか、ユーザの高い移動性並びにさまざまなパターンの通信要求に対処するため、光通信ネットワークを基盤とする上、Software defined mobile networking(SDMN)とNetwork Function Virtualization(NFV)との仮想化技術を組み合わせ、より柔軟なネットワークを構築することが期待されている。そのため、数多くの基地局をネットワーク内に配置し、従来の基地局に配置されたユーザ管理機能を中央制御センターのクラウド上に集約し、ユーザの移動性と需要に応じて再構築するようにしている。本年度における研究では、まず、無線通信ネットワークにおいて、異なる種類の通信需要に適した超高速光基盤ネットワークおよび基盤ネットワークと末端ユーザとを接続するアクセスネットワークの効率的な構築に関する計画問題を追究した。不確定なユーザ位置や通信QoS要求を異なるシナリオとして考え、ネットワーク構築コストおよびユーザの管理コストの合計を最小化とする最適化問題として形式化し、その問題を分解して解くBenders 分解法を適用した。さらに、ユーザ通信要求の異なるシナリオを整理し、その特性によりクラスタ化することにより、考慮すべくシナリオ数を大きく減らし、Benders 分解手法より解を求める時間を大きく減らすことができることを示した。本年での研究ではまた、今後さらなる通信需要の増加を考慮し、近年に注目されている超高速光空間チャンネルネットワーク(SCN)において、通信需要が時事刻々と変化する動的な場合、その需要に合わせて空間チャンネルおよび従来のスペクトル資源を柔軟に割り当てるヒューリステック手法を新たに提案し、その効率性・有効性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの本研究では、SDNおよびNFV技術をベースに構築されるネットワーク環境において、ユーザからの様々なデータ処理要求およびユーザのQoS要求に対して効率的に通信コアネットワークおよびアクセスネットワークの設計問題を数理最適化問題として定式化し、ユーザの通信要求をシナリオとしてクラスタリングすることにより、従来のBenders分解法より速い解決方案を新たに提案し、その有効性および効率性を明らかにした。現在は、これらの手法を無線通信ネットワークにおけるデータキャッシュのアクセス問題に拡張し、ユーザのデータアクセス要求の不確実性を考慮した場合、その問題を解決する手法を試みている。また、超高速光通信ネットワークにおいて、不確実なネットワーク装置故障がある場合のルーティング決定およびスペクトル割当問題に本研究で考案された分解法を適用し、従来手法より素早くよい解を求める方法を考案し、研究を進めている
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果を活かし、今後の研究でネットワークの構築問題およびデータアクセス問題を分解手法で解くことを進める予定である。ここで、たとえば、光通信ネットワークにおけるルーティング決定とスペクトル資源の割当は別々の問題に分解し、段階的に解くことを試みる。また、ネットワーク内にデータ項目の配置とユーザからのアクセス要求とを分解し、不確実性が伴うユーザ位置とデータアクセス要求を考慮し、二段階の確率最適化問題に帰着し、その最適解または近似解を求めることにする。また、通信品質の高いネットワークの構築問題を考え、通信装置(ノード)、通信線(リンク)、そして、ノードとリンクからなるグループによる故障に対応できるネットワーク保全問題を確率的な最適化問題として考え、その最適解を求めることにする。ここで、もし、問題の厳密解が得られない場合、その問題の制御整数変数を実数に緩和し、その問題の近似解を求めることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度では、引き続き本研究を実施することにあたって、光通信ネットワークにおけるルーティングおよびスペクトル割当を考慮したネットワークの構築問題ならびにデータ項目の配置およびユーザからのアクセスを考慮したデータアクセス問題を解き、ネットワークの資源利用効率やユーザのデータ伝送性能を評価するため、数値計算およびシミュレーション実験を行うことが必要である。また、そのための作業を行うには、筑波大学大学院システム情報工学研究群博士後期課程学生2名を研究補助として雇用する予定である。また、研究成果を発表し、確率最適化問題を解決する手法に関する研究調査を行うため、関係深い国内外の研究集会に参加し、当該分野の研究者と交流する必要がある。次年度は本研究課題の最終年度で本研究を総括するため、他の研究との関連性を調べ、本研究成果の利活用および今後の展望を検討する必要があり、そのために昨年度に都合により参加できなかった海外研究集会への渡航費用を当てる予定である。
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