本研究の最終年度において、感染症拡散と意思決定過程を統合するモデルの開発・解析を達成した。当モデルは、感染症の伝播の物理的接触と意思の伝播の社会的接触の両方を捉える、二重層ネットワーク内で動作する。既存の研究に比べて、合理的と遵奉的な特性を持つ行為者を考慮し、モデルの現実性が向上した。 広範な数値的シミュレーションにより、遵奉的行為を新しいワクチンの受容と既存のワクチンの持続的な使用の両方に影響を与える強力な要因として特定した。社会動態と公衆衛生の結果との複雑な相互作用を明らかにすることで、本研究成果は、標的介入戦略や政策などの策定に貴重な示唆を提供している。 さらに、本研究は、感染症とワクチン接種率の共進化を予測する珍しい試みの1つである。統合モデルのコードは他の研究者が利用できるように、専用のGitHubリポジトリで提供されている。当モデルは、新しい行為者の種類(例:狂信者)、新しい学習の仕方(例:強化学習)、および新しい社会的構造(例:ハイパーグラフ)など、複数の将来的な一般化への扉を開けている。したがって、本研究による成果とツールは、疫学と行動科学の接点での将来の探求に豊かな遺産を残す。
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