研究課題/領域番号 |
21K04553
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
金子 雅明 東海大学, 情報通信学部, 准教授 (30454036)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レジリエンス評価方法 / アクションカード |
研究実績の概要 |
災害食のレジリエンス評価方法の確立に向けて,まずは評価の視点を導出するために,過去の病院における災害食の備蓄・運用に関する文献調査を行った.また,共同研究先の川口市立医療センターにおいて既に入手済みの,災害食に関する検討会の議事録を分析した.これら文献調査と議事録分析によって,災害食の備蓄・運用のレジリエンスを評価するための6つの視点(生命維持のためのエネルギー摂取,患者の多様性への対応,運搬容易性,保管,コスト,感染予防・衛生管理)を特定できた. 次に,発災後の災害食提供に必要な業務プロセスを明らかにするために,川口市立医療センターにおける業務マニュアル,及び担当者へのヒアリングにより,状況確認,準備,運搬,提供,回収・保管の5つのプロセスを特定し,各プロセスにおいて必要となる具体的な行動を90に展開した. 5つのプロセスと90の行動の特定に加えて,災害時においては平時によく用いられているマニュアル形式ではなく,緊急時において必要な行動と判断を促すための指示書であるアクションカードの形式にすることが適切であると考え,アクションカードを用いた災害食の提供プロセスの可視化方法を検討した.特に,アクションカードに求められる要件として3つ(作業内容の理解のしやすさ,使いやすさ,管理のしやすさ)とそのために必要な対応を明確にした点が特徴的である.そして,その有効性を川口市立医療センターにおいて検証を行い,実際に当該病院において災害時における標準マニュアルとして採用されることになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究先の川口市立医療センターとは,対面での会合は難しい状況であるが,ウエブ形式での定期的な研究会議やインタビュー調査を行ったり,または重要な研究データは既に入手済みであったため,レジリエンス評価の視点の検討までできているため,現時点では研究をおおむね計画的に進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,評価の視点の精緻化を図ったうえで,それに基づいた評価基準を具体化しつつ,災害書提供の5つのプロセス,90の行動との関係性についてT型マトリックスで明確にしておく必要がある.これはレジリエンス評価方法のコアとなる部分であり,その妥当性・網羅性を向上させるためには,共同研究先病院の災害担当者からのレビューが必要不可欠である.計画段階では2病院にレビューをお願いすることになっているが,新型コロナの再感染拡大によって病院の協力が得られなくなるリスクを考慮して,そうなった場合の代わりとなりえる他の共同研究先を用意し,事前に承諾を得るようにしておく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染拡大により,共同研究先病院との研究会合や打合せのための出張ができなかったことが,当該助成金が生じた主要な要因である.次年度は研究出張ができる見込みであるため,研究協力者による協力を得て,災害食のレジリエンス評価方法の確立に向けて,研究をより一層進めていく.また,計画時においては2病院からレジリエンス評価方法の妥当性レビューを頂く予定となっているが,新型コロナの再感染拡大によって病院から協力が得られなくなる可能性を想定して,他の複数の病院との共同研究体制を次年度に構築する.結果として,計画時の2病院よりも多い病院との共同研究になることもあるので,そのための研究打合せの出張旅費として活用する.
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