研究課題/領域番号 |
21K04558
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
廣瀬 英雄 久留米大学, 付置研究所, 客員教授 (60275401)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会システム |
研究実績の概要 |
感染症流行へのリスク管理では、感染症流行の全体像をできるだけ早期に正確に予測し、それを社会に伝えた後の人々の心理状況の変化や経済状況の動きの先読みを行い、社会的損失を最小限に抑えるような総合的な意思決定が行われる必要がある。そこで、本研究では、1)感染症流行の数理現象について、爆発か鎮火かといった数学的な質的視点だけではなく、感染者数や死者数、医療機関側の受け入れ数といった医療面からの量的な視点から、2)感染症流行によって人々の心と行動が変化していく心理的側面から、3)実際の人の移動や経済活動の側面からと、総合的な状況を把握できるモデルを構築し、感染症流行対策への想定シナリオを策定できるように準備をしておくことを視座としている。 そのため、微分方程式モデルと統計モデルの間のコンシステンシーを追求した上で、流行の全体像が、質的だけでなく、量的にも、信頼度を把握しながら、正しく捉えられるような基本的なモデルを構築することを主たる目的とする。 COVID-19が中国武漢から流行し始めたときには、地域隔離が徹底されていたこと、ウィルスの株は単一であったことから、微分方程式モデルと統計モデルとを比較することが可能であり、両モデル間のコンシステンシーを追求した結果、SIRを基本とする感染症流行の微分方程式モデルは、統計モデルとしては一般化ロジスティック確率分布に対応することがわかった。研究の基本的な土台についての成果は得られたと考える。 しかしながら、その後、初期のウィルスから変異株が次々に現れ、複数のウィルスが混合された形で感染流行の波が出てきた。このため、単純な微分方程式モデルや統計モデルだけでは現象の説明が困難になってきており、新しい数理モデルの導入も望まれるため、次年度以降、この方面への研究も開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症流行の数理モデルは微分方程式であるコンパートメントモデルが中心的なモデルである。しかし、微分方程式での初期値問題は決定論的に解が時間推移するため、確率的な現象を加味するには統計モデルと対応できていることが望ましい。しかし、これまで、微分方程式モデルと統計モデルとの対応についてはあまり取り組まれていなかったようで論文も少ない。 そこで、初年度は、微分方程式モデルと統計モデルとを矛盾なく対応させることに注力した。 その典型例としてCOVID-19について調査した。その結果、COVID-19が中国武漢から流行し始めたときには、地域隔離が徹底されていたこと、ウィルスの株は単一であったことから、微分方程式モデルと統計モデルとを比較することが可能であり、両モデル間のコンシステンシーを追求した結果、統計モデルには一般化ロジスティック分布モデルが対応するということがわかった。ロジスティック曲線は、生物の成長モデルに使われている典型的なモデルなので、この対応は自然であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始時は、1)感染症流行の数理現象について、爆発か鎮火かといった数学的な質的視点だけではなく、感染者数や死者数、医療機関側の受け入れ数といった医療面からの量的な視点から、2)感染症流行によって人々の心と行動が変化していく心理的側面から、3)実際の人の移動や経済活動の側面からと、総合的な状況を把握できるモデルを構築し、感染症流行対策への想定シナリオを策定できるように準備をしておくことを視座としていた。 しかしながら、COVID-19の例をみてみると、初期のウィルスが中国武漢から流行し始めたときには、地域隔離が徹底されていたこと、ウィルスの株は単一であったことから、このような単純なモデルに、行動心理側面や経済活動側面を加味するモデル構築を目指すことは可能であると考えられるが、初期のウィルスから変異株が次々に現れ、複数のウィルスが混合された形で感染流行の波がいくつも出てきたため、当初計画のな微分方程式モデルや統計モデルに、心理行動や経済活動側面を追加させるだけでは、非現実的なモデルになってしまう可能性が出てきた。そこで、新しい数理モデルの導入も望まれるため、次年度以降、この方面への研究も開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症流行による国際会議および国内学会への出張がオンラインになったため旅費が不要になった。引き続き、次年度の国際会議および国内学会への出張、および国際学会参加費等に充てる予定である。
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