研究課題/領域番号 |
21K04561
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小島 康明 名古屋大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (80314730)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射線計測 / 天然放射性核種 / ラドン壊変物 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,放射線施設の安全管理を適切に行うために,自然放射性核種の影響を排除することで,測定下限値を改善した低バックグラウンドな放射線モニタリングシステムの実現を目指すものである.時間情報付きのリスト形式データ収集装置を用いることで,放射線を検出するたびに,そのエネルギーおよび検出時刻を箇条書き的に記録する(これをリストデータと呼ぶ).自然環境中に存在するラドン壊変核種のうち,214Poが短い半減期(164マイクロ秒)で壊変することに着目し,リストデータをオフラインで解析することで,ラドン壊変核種による事象を選び出す.その事象を測定データ全体から除去することで低バックグラウンドを目指す. 今年度は測定に使用するPIPS検出器を購入し,すでに保有していた測定モジュール類と組み合わせることで,放射線測定システムを構築した.また,得られるリストデータを解析するソフトウェアを自作で整備した.その上で,実現性を検討する上での課題などを抽出することを目的に,理想的な条件での測定を行った.具体的には,まずはエアーサンプラーを用いて大気中のエアロゾルを捕集し,フィルターに付着している天然放射性核種を含む測定試料を作成した.捕集中にフィルターの放射線量を測定した結果,80分程度の捕集時間で飽和することを確認した.その後,フィルターを上記の測定システムを用いて大気中で密着測定し,アルファ線およびベータ線に起因すると思われる成分を確認した.検出事象の時間差を解析したところ,214Poの半減期の文献値に近い値が得られ,想定通りに測定できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定システムを構築し,得られるリストデータを解析するためのソフトウェアの基幹部分の作成がほぼ完了した.このことにより,測定システムの性能を確認できたため,今年度に予定していた当初目標を達成できたと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは理想的な条件での測定を行い,基礎性能を把握してきたが,今後は現実の条件に近づけた状態での測定を行い,低バックグラウンドを実現するための手法を開発する.そのための測定チャンバーの製作やガンマ線測定との併用,さらには擬似的な妨害核種として90Sr/90Y線源などを混入させた試料の測定などを試み,最適なデータ解析方法を検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究では消耗品等の購入が不要だったため,15万円弱の残額が生じたが,概ね計画通りに執行した.残額は次年度の助成金と合わせて,測定関連器具の購入や測定チャンバーの製作などに使用する予定である.
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