研究課題/領域番号 |
21K04562
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
楠川 隆博 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (70300720)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | サリン / メチルホスホン酸 / アミジン / 化学兵器 / 化学剤 / 蛍光発光 |
研究実績の概要 |
サリン・ソマン・VXなどの有機リン系化学剤は、容易に加水分解によりメチルホスホン酸モノエステルを生成し、最終的にはメチルホスホン酸を生成するため、これら有機リン系化学剤を検出することは、しばしば困難である。我々は、この加水分解により生成したメチルホスホン酸モノエステルおよびメチルホスホン酸を選択的に検出する蛍光発光センサーの開発を行い、携帯型の検出キットによりテロ現場や戦場において、これら化学剤の使用痕跡を検出可能な分析方法の開発を目指してしている。これらの分析方法は化学剤の使用を裏付けるだけではなく、被災者の迅速な治療開始に貢献できると考えられる。 本年度は、新たに時間依存密度汎関数法(TD-DFT)を用いた分子設計を行い、化学剤の加水分解物であるメチルホスホン酸モノエステルと、加水分解がさらに進行して生成するメチルホスホン酸を検出して、両者の検出時の発光色が異なる分子(ジアミジン)を設計した。設計したジアミジンの合成の結果、メチルホスホン酸モノエステルとジアミジンとの会合体は青色の発光を示し、メチルホスホン酸との会合体は緑色の発光を示し、化学剤の加水分解物の種類により異なる発光色を示すジアミジンの設計と合成に成功した。 今後は、メチルホスホン酸モノエステル、およびホスホン酸の検出感度の向上を目指して、さらなるセンサー分子の設計・開発を進めていく。また、実用化を目指した土壌や被災者の体液(唾液・尿)からのメチルホスホン酸の検出についても検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メチルホスホン酸を検出するセンサーの開発に成功し、学会発表や論文発表を行うことができた。なお、比較として検討したジカルボン酸の検出についても、論文発表を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきたジアミジン(発光センサー)に対して、土壌中・唾液中・尿中のメチルホスホン酸の検出について検討し、実用化を目指す。また、ジアミジンと類似の性質を示すジグアニジンの合成にも着手する。
|