可燃性粉じんの爆発事故において,爆発時に空間に存在する乱れが、爆発強度にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、可燃性の微細な粉じん雲に既知の等方性乱れを与え、爆発後の圧力履歴や火炎形状の変化から事故被害への影響を検討した。用いた粉体はポリメタクリル樹脂(PMMA)、ポリプロピレン樹脂(PP)および難燃性プラスチックとして知られているポリエチレンテレフタラート樹脂(PET)である。粉体サイズは,各粉体5ミクロン、およびPMMAについては5から80ミクロンの異なる粒径のものを準備した。 本年度も引き続き定容器を用いて、粉じん爆発を対象として研究を進めた。今年新たに導入した80ミクロンの粉体は明確な爆発を得ることができなかった.これは,燃焼速度に対し沈降速度が大き過ぎること,および噴射空気流への追従性が悪いため容器内に一様な粉じん雲を形成させ難いことが理由である。バーナー実験でも80ミクロンの粉体では安定な火炎を得ることができなかった. 乱れ強さに対する粉じん爆発の下限界濃度を計測した実験では以下の知見を得た.乱れ強さを大きくすると,限界濃度はどの粉体サイズにおいても上昇した.これは,爆発初期において着火核が小さいと乱れによる熱の散逸により爆発確率が低下するためである.着火初期の条件に対する爆発の可否は,装置や条件依存の部分も多く今後の課題となる. 異なる粉じんに対する乱れの影響では,どの粉体に対しても同様な傾向が見られた.しかし,PETは自己消化性が強くどのような乱れ強さにおいても火炎の自己保持が不可能であった.定容器実験では,乱れを与えることで最大圧力勾配は低下する傾向が見られた.しかしある乱れ強さ以上では再び上昇することも分かった.また,最大圧力はどの乱れにおいても,乱れなしと比較して低下した.これは,火炎厚みの増大により容器壁面への熱損失量が増加するためである.
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