研究課題/領域番号 |
21K04585
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
村田 晶 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (30283097)
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研究分担者 |
大堀 道広 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 准教授 (50419272)
須田 達 金沢工業大学, 建築学部, 教授 (90533571)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 家屋被害 / 洪水氾濫 / 宅地地盤 |
研究実績の概要 |
洪水氾濫流が家屋に及ぼす影響は複雑であることから,洪水時に自宅がシェルターたり得るか,または安全な場所に避難するべきかどうかを考える上で,家屋被害に及ぼす洪水氾濫外力と建物抵抗力の関係を考察し,家屋が安全かどうかを判断するための指標について検討を行った.建物抵抗力を考慮する上で,洪水流による建物敷地洗掘の影響について洗掘係数svを導入することで指標の妥当性があるかを検証した.検証に用いる被害データとしては既往の平成27年9月関東・東北豪雨による鬼怒川洪水被害,平成30年7月豪雨による愛媛県西予市野村地区洪水被害,令和元年台風19号による千曲川左岸の長野県長野市穂保地区洪水被害に加え,令和3年球磨川流域における人吉市洪水被害,令和4年8月大雨による洪水で被災した石川県小松市中海地区における梯川洪水被害に適用し,本指標に被害を説明する十分な精度があることを確認した.また実地調査より、水位によって木造住宅に作用する外力条件が異なること、加えて、抵抗要素が耐力壁ではなく、柱脚部の接合耐力となることが考えられるために、洪水災害における木造建物の残存耐力評価の方法について検討すべきであることを明らかにした。 本研究による指標算出には流速推定にマニング流速式を適用しているが,より詳細に流速を推定する必要があると考えられることから,河川氾濫解析に関するiRIC公開プログラムNays2D Floodのインストールを実施し,次年度の解析準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
洪水氾濫流に対する洪水時家屋被害推定指標の作成ができ,推定精度についても十分に被害関係を説明できる程度を担保していると考えられる.また,家屋の抵抗強度については,被災家屋から推定している関係上家屋の状況にはばらつきを含んでおり,推定指標を実用化していくには,家屋被害推定を行う際家屋耐力と流体力の相関をより正確に評価する必要があるが,家屋密集度や洗掘の程度を考慮した洗掘係数を導入することで,指標の精度を向上することができた.しかしながら,植生等の影響や家屋の築年数,木造建物の残存耐力評価について検討すべきであることを明らかにした.これらの検討項目を導入することで,より精緻な指標を構築することができると考えており,洪水による人的,物的被害を軽減できるようになると考えられる. なお,家屋耐力を評価するための模型実験は準備中であり,最終年度に模型実験のための準備を行う予定としている.また,洪水外力を算出するための流速推定アプリケーションを導入し始めているところで,本アプリケーションによる解析結果を指標算出に適用することで,より研究が進展すると確信しており,以上より概ね本研究が順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
1)洪水氾濫流については,洪水氾濫流の推定精度を上げるために令和2年7月豪雨における,Nays2D Floodアプリケーションによる洪水氾濫流数値シミュレーションを実施する.また,令和3,4年度で入手済みの洪水氾濫流シミュレーション結果を精査し,新たな知見を加味した数値シミュレーションも併せて実施する.(村田と大堀が担当する.) 2)家屋耐力を評価するための模型実験を実施する.予備実験結果をもとに,建物抵 抗強度を評価する.(須田と村田が担当する.) 3)令和4年度までに収集した被害データに加え,直近で発生している洪水被害についてもデータ収集を行い,家屋敷地地盤の耐力評価と洪水氾濫流に対する洗掘可能性を評価する. 4)研究成果を積極的に学会,また一般市民に向け発表し,洪水氾濫流に対する防災力が向上できるように広報するとともに,これまでの研究成果を論文にまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響により実験モデル制作にかかる作業が遅延していることから,それに伴う代金支払い等の手続きが次年度初頭になる見込みとなっている.現在進行中となっていることから,次年度に合算する形として計画したい.
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