洪水氾濫流が家屋に及ぼす影響は複雑であることから,洪水時に自宅がシェルターたり得るか,または安全な場所に避難するべきかどうかを考える上で,家屋被害に及ぼす洪水氾濫外力と建物抵抗力の関係を考察し,家屋が安全かどうかを判断するための検討を行い,洪水氾濫流に対する抵抗指標を作成した。指標を作成するにあたり建物抵抗力を考慮する上で重要な素因となる,洪水流による建物敷地洗掘の影響については洗掘係数svを導入することで,指標の妥当性があるかについての検証を行った.検証に用いる被害データとしては既往の平成27年9月関東・東北豪雨による鬼怒川洪水被害,平成30年7月豪雨による愛媛県西予市野村地区洪水被害,令和元年台風19号による千曲川左岸の長野県長野市穂保地区洪水被害に加え,令和3年球磨川流域における人吉市洪水被害,令和4年8月大雨による洪水で被災した石川県小松市中海地区における梯川洪水被害に適用し,本指標に被害を説明する十分な精度があることを確認した.また実地調査より、水位によって木造住宅に作用する外力条件が異なること、加えて、抵抗要素が耐力壁ではなく,柱脚部の接合耐力となることが考えられるために、洪水災害における木造建物の残存耐力評価の方法について検討すべきであることを明らかにした。 本研究による指標算出には流速推定にマニング流速式を適用しているが,より詳細に流速を推定する必要があると考えられることから,河川氾濫解析に関するiRIC公開プログラムNays2D Floodによる解析を実施し,マニング流速式に用いる浸水深の評価を行った。
|