研究課題/領域番号 |
21K04587
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田所 敬一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70324390)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海底地殻変動 / キューブサット / LoRa / 音響測距 / GNSS測位 |
研究実績の概要 |
〇データ送信プログラム作成 1)海底地殻変動観測で得られる音響測距の波形データから音響信号の直達波の走時を求め,2)そのデータ容量を縮減するプログラムを作成した.1)では走時の情報をASCII形式で得ることとし,測距1回あたりのデータサイズが64KBから58バイトに縮減された。2)ではシフト演算とビット演算を組み合わせて1つの数字を4ビットで表現することとし,1回の測距結果を120ビットにまで縮減した. 〇陸上での送信実験 音響測距波形とキューブサットへの送信時に使用する処理用PCの実機を用いて,陸上において3回の送信実験を行った.1回目は,2021年5月1日ー10日に研究室内にて行った.3分毎に音響測距波形を処理用PCに送信し,その都度上記のプログラムで処理を行って処理用PC内にデータを蓄積し,1日毎に一括してPCへ直接送信した.その結果,データ送信プログラムでの処理と一括送信に問題がないことを確認した.2回目は,2021年6月21日に研究室内において,LoRaWANを介して2m程度の短距離での送受信を行った.その結果,LoRaWANでの通信にも問題がないことを確認した.3回目は,2021年9月7日に本学と約2.7km離れた平和公園アクアタワー展望室との間でLoRaWANを介した送受信を行った.音響測距の疑似波形を1分毎に処理して送信し,長距離でも問題なく送受信ができることを確認した. 〇高精度GNSS測位データの測位精度評価 Trimble社のCenterPoint RTXを用いて高精度なGNSS測位結果を取得し,その測位精度を評価するための実験を行った.データの取得は本学の屋上にて2011年8月6日ー31日に行った.RTXのfixが外れた際には一時的に測位精度が40cmー1m程度に悪化するものの,fixされている間の測位結果のばらつきは,従来のPPP測位結果の半分程度であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海底地殻変動観測のためには音響測距データとともに高精度なGNSS測位結果も送信する必要がある.そのためにCenterPoint RTXの測位実験を2021年7月30日に離島である銭洲岩礁と,2021年9月19日〜22日に洋上を航行する船舶において実施したが,それぞれRTXサービス側と受信機側の設定に問題があり,これらの実験による精度評価が実施できていない.しかしながら,当初予定通り,音響測距データ送信プログラムの作成とLoRaWANによる送信実験を行い,実際のキューブサットでのデータ送信に用いるプログラムが完成するとともに,LoRaWANによる送受信に問題がないことが確認できた.よって,総合的におおむね順調に進展している判断した.
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今後の研究の推進方策 |
まず,課題として積み残した離島および洋上を航行する船舶におけるCenterPoint RTXの測位実験を早急に実施する.特に船舶における実験のための船の手配は完了しており,沖縄本島から紀伊半島までの長距離にわたる移動中にデータを取得する予定である.さらに,ほかの高精度GNSS測位サービスであるCLAS(測位衛星みちびきを用いたサービス)に対応した受信機も開発されており,これの測位精度評価も実施する考えである. キューブサットの打ち上げを控えて,洋上での音響測距データ送信試験にも着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
銭洲岩礁と洋上を航行する船舶におけるCenterPoint RTXサービスの測位精度評価実験に問題が生じた.再度の実験を試みたが,船舶の運航予定に空きがなく,やむを得ず翌年度に再度実施することとした.次年度使用額は,翌年度請求分と合わせてこの実験のための傭船料に充てる.また,測位衛星みちびきを用いたCLASの測位精度も検討するための経費にも充てる.
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