台風等の強風による構造物被害では,風力そのものによる被害だけでなく破損した断片等が飛散物となって被害が連鎖し,拡大する。本研究では特にシート状の飛散物に着目し,飛散物の衝突や絡みつきによる構造物破損への影響を検証する。 2023年度の成果は下記の通りである。 ①2022年度までに製作した風洞装置とケーブル張力計測システムにハイスピードカメラおよび電圧トリガ装置を付加し,実験模型の動きを把握するための撮影および電圧と風速の計測同期システム構築を試みた。②付着物として,金属板を想定したアルミ箔(厚さ0.011mm)を使用した。アルミ箔の端部に蛍光塗料を塗布し,2台のビデオカメラを用いて多角的に付着物の動きを撮影した。③ビデオ動画を画像解析し,付着物の先端の変動とケーブル張力との相関を検証したところ,先端部の移動量と張力との間に関連が見られた。風圧による平均的な張力増大,風速変動に伴う張力の変化に加えて,付着物の瞬間的な挙動も張力の変動に影響を与えることが分かった。④付着物の長さと幅を変化させて,風速に対する挙動を把握した。付着物が長い,または大きいと,鉛直方向の変形量が大きくなり,流れ方向に変形したケーブルに付加的な力を生じさせることを定性的に確認した。 強風下でのケーブル張力の変動に及ぼす付着物の影響を定量的に把握することで,飛来物の付着による構造物へ生じる荷重を推定することができ,被害拡大の要員分析の一助となる。もって,大規模停電を引き起こした強風被害要因の究明に資する情報が提供できる。
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