研究課題/領域番号 |
21K04596
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平沢 秀之 函館工業高等専門学校, 社会基盤工学科, 教授 (90238353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 緊急仮設橋 / 木橋 / ワーレントラス / 架設実験 / 人力架設 |
研究実績の概要 |
自然災害が発生して交通路が分断され、人命救助や物資輸送が困難に陥った際に、災害発生直後に架設し、72時間以内に供用開始できる「緊急仮設橋」を開発・実用化することを目的としてる。令和4年度の研究は、全体構造の設計と骨組構造解析及びトラスの部材製作と屋内架設実験を実施する計画としていた。 全体構造の設計では、橋梁形式をワーレントラス形式とし、支間長を10m、幅員を1.2m、主構高を2.3mとした。トラス部材は、地元材料である「道南スギ」を採用し、断面形状は120mm×120mmの断面を有する流通材を使用した。荷重条件は、歩道橋であるため群衆荷重3.5kN/m2とし各部材の圧縮・引張強度を超えないことを骨組構造解析により確認した。 部材製作のうち、トラス部材(上弦材、下弦材、斜材)の製作及び接合鋼板の製作は、それぞれ製材会社、鋼材会社に依頼した。床版、横桁、橋門構部材は、本校の実験室において材料切断、穴あけ、接着等の加工を研究代表者と学生らにより実施した。 屋内架設実験は、①トラス材の仮組み立て、②橋門構の仮組み立て、③全体構造の架設実験、の3回に渡り実施した。①と②に関しては、部材同士を連結鋼板とボルトナットで接合させる試行実験であり、ボルト孔の位置の精度を確認する目的であるが、精度に問題ないことが判明した。③は本校体育館を使用して、教職員と学生10名で実施した。正味の架設時間は、2時間21分となり、極めて短時間で架設できることが判明した。この架設時間短縮化の要因は、各パーツの重量が軽量化できたこと、部材数を減少させたこと、横構にワイヤーロープとターンバックルを採用して取り付け作業の省力化が図れたためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の当初計画は、(4)全体構造の設計、(5)骨組構造解析、(6)部材製作、(7)屋内架設実験、としていた。これらに対し、(4)において、ワーレントラス橋構造⇒CADによる全体構造寸法決定、トラス部材・横桁・橋門構⇒CADによる寸法決定、ボルト孔位置決定、を遂行することができた。(5)において、FEM解析の自作プログラムを使用し、荷重条件を与えて部材力、変位を算出した。解析の結果、全ての部材において材料強度を下回り安全であることを確かめた。(6)において、CAD図面作成⇒木部材発注・鋼部材発注⇒納品⇒切断・穴あけ加工、を行った。(7)において、本校体育館を使用して架設実験を次の手順により実施した。会場設営⇒部材運搬⇒架設時間計測開始⇒土台設置⇒下弦材設置⇒斜材取り付け⇒上弦材取り付け⇒橋門構・横構取り付け⇒ボルト本締め⇒架設完了・時間計測完了⇒解体・撤去。 以上により、当初計画通りの研究を遂行できたため、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
体育館での架設実験後、材料は一旦実験室内で保管している。今後は、この材料を用いて、実際の災害現場を想定した屋外架設実験を実施する。屋外架設実験では、橋梁本体の組み立ては人力で行い、河川上への架設は、クレーン一括架設工法を用いる。なお、河川も、そこに河川があると想定する仮想河川とする。緊急仮設橋として使用する場合は、永久橋と同程度の耐久性は不要であると考えられるが、ここでは、ある程度長期間の使用に耐えられるよう、架設前に、木材に対して防腐処理(防腐剤塗布)、接合鋼板に対して防錆処理(塗装)を行うこととする。架設実験の際は、屋内と同様に時間の計測を行い、短時間架設が可能かどうか、また、人力作業やクレーン作業で作業が困難な状況が無いかを明らかにし、実用性を検討する。 なお、研究を遂行する上での課題は、函館高専の構内の敷地で架設実験を行い、しばらくの期間、この橋梁を設置することになるが、学内会議で承認が得られたため、課題はクリヤした。クレーンの手配も問題ない。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は3068円と少額であり、ほぼ予算を使い切ったと見なしえる。次年度はこれを屋外架設実験の工事費に充当する予定である。
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