異常気象や地震による自然災害は、我が国では今後もこれまで以上に多発することを想定する必要があり、その対策を立てることは待ったなしの状況である。このような状況の中、本研究は自然災害により交通路が遮断された地域の早急な復旧を果たすことを目的として実施した。最終年度は、接合鋼板の強度試験と実物大木製トラス橋の屋外架設実験を行った。その成果は以下の2点である。(1)トラス部材(上下弦材と斜材)と横梁との連結に使用する鋼板に、溶接部をなくして折り曲げ加工した新しい接合部材を開発し、その強度実験を行った。実験の結果、十分な強度を有することが判明した。(2)屋外架設実験では、トラス本体の組み立て時間は作業人員10名で2時間53分と短時間であった。組み立て後のクレーンによる一括架設の作業時間は15分であった。 研究期間全体(3年間)を通じて得られた研究成果は、実用に耐え得る支間10メートル程度の歩行者用緊急仮設橋を開発できたことである。開発した緊急仮設橋は以下の特徴を有する。(1)集合型せん断破壊が生じにくく接合強度の高いボルト接合方法を載荷実験により開発し採用した(2021年度の研究成果)。(2)トラス橋を構成する部材(木材、鋼材)の重量は人力による運搬、組み立てを考慮して軽量化し、15kgf以下とすることができた。トラス橋本体の死荷重は931kgf(木材の重量=635kgf、鋼材の重量=296kgf)に抑えている(2022年度の研究成果)。(3)接合鋼板の折り曲げ部は横梁によるせん断力が作用するが、実用上問題のない強度が確保されている(2023年度の研究成果)。(4)組み立て時間は、屋内架設実験では2時間21分、屋外架設実験では2時間53分となり、短時間での供用開始が可能である(2022年度、2023年度の研究成果)。
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