研究課題/領域番号 |
21K04605
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小口 千明 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20312803)
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研究分担者 |
若月 強 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80510784)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 花こう岩 / 崩壊発生率 / DEM / GIS / 斜面傾斜 / 広島 / 石垣島 / 風化 |
研究実績の概要 |
崩壊予備物質である土層の物性の違いを明確にするため、基盤岩石-風化-崩壊という一連の物質変化と気候条件との関係の体系化を目指している。具体的には、複数の気候帯における花こう岩分布地域において、未風化岩から風化土層の物性調査と地形条件から崩壊に対する脆弱性を検討している。 2022年度は、それまでに調査した花崗岩地帯(南木曽、岩国、広島、石垣島)の斜面土壌の風化様式の違いを受け、対象地域を絞って地形調査を行った。すなわち、2014年に発生した西日本豪雨(広島県広島市)と2010年に石垣島を襲った大雨による土砂災害に焦点を当て、ArcGIS (Esri社) に 5m×5mのDEM データと防災科研により収集された崩壊地データを取り込むことにより、斜面の特徴を検討した。 同じ斜度をもつ斜面でであっても崩壊が起こった斜面と起こらない場合がある。この実態を考慮するためには、傾斜角ごとの崩壊発生率を示す必要がある。これは、傾斜角ごとの崩壊発生地点数を、その地域全体における当該傾斜角をもつ地点数で除すことにより求められる。この作業を、広島地域と石垣島地域で行い比較した。 崩壊地の地点数は、広島が326地点、石垣島が203地点で100以上の差があるものの、傾斜角ごとの崩壊件数には大きな差はなかった。共に最も崩壊した傾斜角は30~35度であった。広島では、傾斜角が30度から35度の範囲をピークとして、それよりも急勾配であっても、発生率が低かった。一方で、石垣島での崩壊発生率は、斜面勾配が45~50度でピークとなり、それ以上の傾斜角では崩壊件数が0のため、発生率も0となった。石垣島は年中温暖な地域で風化に伴う粘土化が進行しているのに対し、広島では寒暖差が大きく、風化で生成された真砂がそのままの状態で斜面上に残されていることが同時多発的に崩壊を引き起こしたためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様な気候条件下での事例を増やすことを検討していたものの、COVID-19の影響が残っていたため、調査地を増やすことは難しかった。これまでの知見を再整理することにより、興味深い結果を導くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度は、さらに多様な気候条件下での事例を増やすとともに、分析済みの風化岩石試料のデータの解析を進め、必要であれば補強データを取得する。また、崩壊発生し得る場所の地形条件については予察的な知見を得たが、トリガーとなる降雨条件に関する検討にはまだ不足があるため、今後はそのような検討も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、GIS等の解析に用いるPCなどを比較的安価に抑えることができたこと、オープンアクセス誌への投稿が遅れたことにより、それらに関わる予算使用がなかった。2023年度については、それを有効活用し、追加データの収集や解析に用いるほか、論文発表の費用に充てたい。
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