本研究の目的は,深層学習というAI技術を用いて,発災後1時期の光学衛星画像から自動的に土砂災害を検出・分類することである。 初年度は2018年7月豪雨と2018年北海道胆振東部地震を中心に,土砂崩壊データを整備した.光学衛星SPOT画像を取得し,Lidarや国土地理院の判読結果を用いて,衛星画像から識別できる土砂崩壊データを作成した.また,10m標高モデルや地質データなどを用いて,崩壊地との関連性を分析し,機械学習による土砂崩壊発生地点の予測を行った.広島県と北海道における土砂崩壊域予測の精度はともに75%程度であった. 次年度は北海道の土砂崩壊データを用いて,地震後の光学衛星画像から土砂崩壊箇所を判別する深層学習モデルを構築した.衛星画像を200mのメッシュに分割し,深層学習手法の中で広く使われているCNN(Convolutional neural network)モデルを用いて,メッシュを「土砂崩壊あり」と「土砂崩壊なし」に分類した.近赤外バンドを使用したモデルでは,90%以上の精度で土砂崩壊を判別できた. 最終年度では,土砂崩壊箇所の形状・範囲を検出できるインスタンス セグメンテーションの深層学習モデルの構築を行った.作成された土砂崩壊データと事後の光学衛星画像をMask R-CNNモデルで学習し,北海道胆振東部地震で発生した土砂崩壊域の検出を行った.77%の土砂崩壊域が検出され,モデルの正解率が92%であった. 3年間の研究を通して,広島県と北海道の土砂崩壊データが整備され,深層学習モデルが土砂災害検出における有用性を示した.構築したモデルの精度は90%以上であり,大規模災害時の土砂災害情報の収集に貢献するものと期待できる.
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