• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

山岳域の積雪・森林リモートセンシングを活用した「雪崩・倒木ハザードマップ」の構築

研究課題

研究課題/領域番号 21K04607
研究機関信州大学

研究代表者

福山 泰治郎  信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (60462511)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード雪崩 / 倒木 / 山岳域 / リモートセンシング / 森林
研究実績の概要

雪崩と倒木が発生した南アルプスの森林斜面を対象として,定点カメラによる現地観測によって積雪深を調査した。仙丈ヶ岳薮沢流域北東斜面(標高1,950m)において,気温・積雪深・融雪水量を観測するとともに,AMeDAS伊那(標高633 m)の気温と降水量から,気象観測地点(標高1,950 m)の積雪水量(積雪量を水高換算した値)と融雪水量を推定した。気温は馬ノ背尾根(標高2,700 m)と薮沢でそれぞれ15分・10分間隔で観測した。積雪深は定点カメラで標尺をインターバル撮影して読み取った。融雪水量はライシメータと転倒ます雨量計で連続観測した。計算した積雪水量と積雪深の推移を比較すると,積雪の開始時期は一致した。消雪時期は,標尺の周囲が先行して融雪したものの,撮影範囲から雪がすべて消えた時期は計算と1日の誤差であったことから,積雪期間が概ね再現されたと考えられた。融雪水量を比較すると,計算では12月以降断続的に,3月以降連続的に融雪すると予想されたが,融雪ライシメータで観測された融雪水量は,2月末以降に融雪が集中した。融雪水量のピークを比較すると,計算値が最大1.0 mm/h(最大7 mm/day)だったのに対して実測値は最大10.3 mm/h(最大52 mm/day)で,短期間に集中的に融雪する実態がみられた。
2021年度には,超音波積雪深計や風向風速計,日射計,温湿度計および,地表に融雪ライシメータを設置して,熱収支による積雪水量の推定とその検証を行うための気象観測および水文観測をスタートさせた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

山地森林域で発生する雪崩は,発生直後に調査できないケースも多く,雪崩の速度や規模を推定する上で倒木調査は重要である。昨年度,雪崩跡地斜面において倒木調査を実施した。森林被害地において被害木の直径・破断高・樹種を調査した。これにより,雪崩のシミュレーションに必要な検証データを得ることができた。また,雪崩前後の空中写真を判読して雪崩による森林被害範囲を推定した。
気温減率(-0.6℃/100 m)に標高差を乗じて差し引いて気象観測地点の気温を求めた。気象観測地点の降水量には伊那の値を用いた。このとき, 2℃を雨・雪の閾値として積雪水量と融雪水量を計算した。計算で得られた積雪水量の変化と,定点カメラで観測した積雪深の推移を比較すると,積雪期間が概ね再現された。融雪水量のピーク流量を比較すると,計算値が最大1.0 mm/h(最大7 mm/day)だったのに対して実測値は最大10.3 mm/h(最大52 mm/day)で,短期間に集中的に融雪する実態がみられた。
昨年度はさらに,雪崩跡地近傍の斜面において気象観測機器(超音波積雪深計,風向風速計,日射計,温湿度計および融雪ライシメータ)を設置することができたので,積雪深の推定精度向上については,2021年冬から2022年春までの現地気象観測が雪崩などの被害を受けずにデータが取れていれば,熱収支による積雪水量の推定とその検証に着手することが可能になると考えられる。

今後の研究の推進方策

今年度は,雪崩流下シミュレーションを行うために,最新の航空機レーザ測量成果を入手して,樹木位置図と樹高分布図を作成するとともに,空中写真判読にもとづいて,雪崩の流下・到達範囲と倒木範囲の予測を行う。また,倒木の実態をより正確に明らかにするために,倒木の形態(幹折れ・根返り)にも着目して現地調査を行う。
さらに,雪崩による倒木の流下・堆積挙動の予測にも取り組む。例えば,倒木がその場にとどまっているか,その場から流れ去った場合どこで堆積しているか,それに関わる雪崩速度・地形条件(傾斜・縦断形状・横断形状)や,植生条件(森林の厚さ:倒木の開始地点から倒木域の末端までの距離)の影響についても,現地調査にもとづいて検討する。また,森林帯までの離れ距離や雪崩の滑走距離が,森林に衝突する雪崩速度や雪崩による倒木などの被害の有無・倒木の形態(幹折れ・根返り等)にも影響を及ぼしていることが想定されるので,森林の樹高や直径,森林の空間分布が,雪崩の挙動(発生・非発生,流下及び停止)や倒木の有無・倒木の形態に及ぼす影響についても,現地調査や航空機レーザ測量成果を活用して調査を実施する。
さらに,現在までの調査から,雪崩の発生履歴が次の雪崩の挙動に影響を及ぼすことが予想されるため,現地調査や複数時期の空中写真の判読,シミュレーションによる検討を行い,雪崩によるまとまった倒木の発生が,次の雪崩の発生や流下,倒木の規模に及ぼす影響についても検討したい。

次年度使用額が生じた理由

当初2箇所に設置する予定であった気象観測機器を雪崩の直撃を受けにくい安全な1箇所に集約し,その分の経費を次年度以降の研究費に充てることとしたために,次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は,現地調査およびその機材の購入に充てる計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 大規模雪崩による森林被害の再現と予測2022

    • 著者名/発表者名
      前田耕平・福山泰治郎
    • 学会等名
      砂防学会研究発表会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi